「えらいところに来てもうた」東映京都撮影所の着物スペシャリストが見た「SHOGUN将軍」の米現場
米エミー賞で18冠を獲得した配信ドラマ「SHOGUN 将軍」。俳優真田広之さん(64)がプロデューサーとしても心血を注いだ大作には、京都で時代劇の撮影を第一線で支えるスタッフも関わった。東映京都撮影所の衣装部室長、古賀博隆さん(64)は、海外で本物の時代劇をつくろうという熱気とパワーに、太秦で培った経験と知識で応えた。 【写真】夫のお土産に妻「わーい!ミスド!」→箱を開けて困惑「は?え?」 ネット「わが家も毎回これ」「最高の買い方」 1982年に東映に入社し、翌年に衣装部に配属された。若き日に太秦の現場で鍛えられた真田さんとは旧知で、映画「里見八犬伝」、テレビドラマ「影の軍団」シリーズなど、出演作にも数多く関わってきた。 「SHOGUN」では「着物スペシャリスト」の肩書で、衣装全般の助言を求められた。試作された衣装を確認し、陣羽織にあしらう家紋の位置、はかまの長さ、打ち掛けの柄の意匠など、「あくまで(物語の背景となる)安土桃山時代の装束として、不自然のないように」と細かく助言した。 2021年秋に撮影が行われていたカナダ・バンクーバーに入った。屋敷や集落など、日本の光景をゼロから作り上げた広大なオープンセットに圧倒された。「スタッフは日本の倍以上。撮影しているすぐ横では、大工たちが城の門を建てていた。えらいところに来てもうたなあ、と」 それでも、異国とは言え時代劇の現場だった。撮影に入ると、俳優たちの着付けや所作の確認に奔走。女性キャストがマニキュアを塗っていることに気づき、「この時代にはなかった」と落としてもらったことも。現地の着付けスタッフにも技術を指導した。 衣装だけでなく、やりの握り方など、違和感に気づくと、臆せず意見した。城内のシーンをにぎやかにしようと農民のエキストラを加えようとした演出家を「城には侍しか入れない。国会議事堂(の議場)には一般の人は入らないでしょ?」と説得した。「どこに行っても、仕事に臨むスタイルは一緒。太秦のものづくりの感覚をそのまま持っていった」と振り返る。 現地には1カ月半ほど滞在し、太秦でテレビ時代劇「大岡越前」の撮影が始まることを受けて帰国した。今年2月に行われたジャパンプレミアで完成した作品と対面。見まごう事なき時代劇の超大作に「映画館とか大きなスクリーンで見たい作品に仕上がった」と感慨を話した。 9月にはエミー賞受賞の報を受けて「日本の文化が外国の人に認められたことがすごくうれしい」と喜んだ。「今後も機会があれば、海外の作品にも参加してみたい」 (まいどなニュース/京都新聞)
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