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コロナ禍による外出自粛、アコースティックギターサウンドが急上昇

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Rolling Stone Japan

音楽ストリーミング全体が落ち込むなか、ストリーミングデータによってブルーグラス、カントリー、シンガーソングライターの名曲などの需要がコロナ禍で急上昇したことが明らかになった。 【写真】秘蔵写真で振り返る、1975年のボブ・ディラン 何百万人もの音楽リスナーは、ミーガン・ジー・スタリオンの「Savage」のビートに合わせてパンデミックによる孤独感、精神的な疲労、避けて通れない退屈に対処しようと努めてきたはず――あまりに多くの人がそうした結果、「Savage」はローリングストーン誌のシングルトップ100チャートで1位を獲得してしまったほどだ。だが、アメリカ人は全体としてシンセサイザーのビートよりもアコースティックギターの音色に癒しを求めているようだ。 ソーシャル・ディスタンシングが叫ばれるようになった最初の2カ月間、アメリカのリスナーがエレクトロニック音楽という電子的なサウンドからアコースティックなサウンドへと大幅にシフトしたことがストリーミングデータによって明らかになった。アコースティックなサウンドとは、シンガーソングライターの名曲からカントリーセッション、さらにはジョーン・バエズからバーズ、そしてボブ・ディランといったアーティストが奏でる音色だ。 情報&コミュニケーション・テクノロジー会社のAlpha Dataによると、アメリカにおけるオンデマンド・ストリーミングは3月13日から5月7日までの前年の同時期と比較して8%の落ち込みを見せた。ポップス、ダンス、ヒップホップなどのジャンルのストリーミング件数が最大16%低下した一方、カントリー、ソフト・ロック、ブルーグラスは安定的または2ケタの伸び率を示した。今回の分析はアメリカにおけるオンデマンド・ストリーミングに限定されているものの、Alpha Dataが供給するデータはローリングストーン誌のチャートの主な指標にもなっている。 もっとも打撃を受けたのは、16%マイナスのポップスだった。ビリー・アイリッシュ(マイナス31%)やアリアナ・グランデ(マイナス20%)といったポップス界の大物アーティストのストリーミング件数が減少するなか、多くのアーティストがアルバムのリリースを4~5月に延期した結果、新作が不足する状態が続いた。その一方、懐かしのオールディーズ・ポップスは安定した人気をキープし、伝説的ポップスの人気も衰えなかった――マドンナのストリーミング件数が2%減少したのに対し、プリンスのストリーミング件数は18%と急上昇したのだ。ヒップホップのストリーミング件数は15%減少したものの、5月1日にドレイクがリリースした「Dark Lane Demo Tapes」のおかげで最終的にはコロナ以前の数値まで復活した。最初の6週間に11%の落ち込みを見せたダンスミュージックは、4月末に通常レベルに戻っている。 カントリー音楽ファンも同じような新作不足を経験していた。パンデミックの影響によってディクシー・チックス、ルーク・ブライアン、マーゴ・プライス、ウィリー・ネルソンのアルバムリリースが延期されてしまったのだ。だが、コンテンポラリー・カントリーと昔ながらのカントリー音楽が8週間前と比べてそれぞれ8%ずつアップしたおかげでカントリー音楽は全体的な成長を維持した。さらに大物カントリースターがアルバム――ローリングストーン誌のアルバムトップ200チャートで1位を獲得したケニー・チェズニーの『Here and Now』――をリリースすると、同ジャンルは1年においてもっとも多い週間ストリーミング件数を記録した。 ストリーミング件数において最大の増加を見せたのは、ホンキートンクやウエスタン・スウィングをはじめとするカントリー音楽をルーツに持つ楽曲だった。同ジャンルは、2カ月前と比較して22%アップしたのだ。フォークが9%、ブルーグラスが5%増加する一方、アメリカーナは安定していた。ジョン・デンバーの「Leaving on a Jet Plane」のストリーミング件数は18%アップし、タウンズ・ヴァン・ザントの楽曲は12%アップした。 ロックにおいては、バリエーション豊かな楽曲がストリーミングされた。フリートウッド・マックの「Dreams」やサイモン&ガーファンクルの「早く家へ帰りたい」のような楽曲のストリーミング件数が2ケタに達する一方、クイーンは8%、スレイヤーは11%とともに減少した。ディストーションで歪ませたギターとボーカルのシャウトが聴きたくなる時期ではないのだ。ハードロックとメタルは10%減少したが、スタジアム・ロックは23%とさらなる落ち込みを見せた。シンガーソングライターの楽曲(プラス8%)、ソフト・ロック(プラス5%)、ルーツ・ロック(プラス4%)がそれぞれ増加し、アコースティック・ロック人気が再燃する結果となった。 アーティスト個人のカタログを見ても、ファンはよりアコースティックなサウンドを求める傾向にあった。テイラー・スウィフトのオンデマンド・ストリーミング件数が全体で22%減少した一方、「Today Was a Fairytale」のような初期のカントリー寄りの楽曲は根強い人気をキープした。ボブ・ディランの件数は全体で10%増加し、なかでも「Let Me Die in My Footsteps」(プラス30%)や「Oxford Town」(プラス23%)といった初期のアコースティック・フォークバラードの件数が急上昇した。 外出自粛が実施された最初の2カ月間と2019年の同時期を比較すると、こうしたトレンドがはっきり見て取れる。音楽業界全体から見ると、3月13日から5月7日までのオンデマンド・ストリーミングの増加率は昨年と比べて1%にも満たない。これは、プラス20%という6カ月間の平均に比べると取るに足らない数だ。前年と比較してポップス(マイナス13%)とヒップホップ(マイナス4%)のストリーミング件数が減少する一方、コンテンポラリー(プラス11%)、ルーツ・ロック(プラス31%)、シンガーソングライター音楽(プラス14%)は増加した。 Alpha Dataが提示するトレンドは、各ストリーミングサービスが目の当たりにしている状況の大部分を反映している。ネットラジオPandoraのリスナーがブルーグラス、カントリー、フォーク・ロックに傾倒するなか、同プラットフォームの音楽チャンネルCountry Chillの視聴時間は倍近くアップした。DeezerはAcoustic Escape、Happy Acoustic & Folk、Acoustic Chillなどのプレイリストの再生回数がグローバルレベルで増加したと公表。そのなかでもAcoustic Escapeは3~4月にかけて同社のプレイリスト最大のグローバルレベルの成長を記録した。Spotifyはアコースティック音楽の再燃について報告しなかったものの、リスナーはよりゆったりとしたノスタルジックな音楽を好む傾向にあったのは事実だ。 ・大手レコード会社の重役たちが明かす、Withコロナ時代のマーケティング戦略

Emily Zemler

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