【独自】国に対して批判的? 琉球大、日米地位協定めぐる准教授コメントの一部を修正要請
日米地位協定に関する著書で「石橋湛山賞」を受賞した琉球大学の山本章子准教授が授賞式で述べたコメントについて、大学側が同大ホームページに掲載する前に、国に対して批判的な文言の一部の修正を求めていたことが、BuzzFeed Newsの取材でわかった。山本准教授は「研究には問題提起をする役割がある。忖度するべきではない」と批判しているが、大学側は「掲載前の記事については答えられない」としている。【BuzzFeed Japan/籏智 広太】 【写真30枚】米軍基地で働く沖縄の女性
日米地位協定は、1960年に日米安保条約を改定した際に日米間で結ばれた。その運用においては、在日米軍による騒音問題、事件事故が起きた際に日本側に捜査権がない、さらには駐留経費「思いやり予算」の過負担にもつながっていると指摘される。 山本准教授は著書『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年ー』(中公新書)で、時に「過剰な優遇の根源」ともされる同協定について、その歴史や、非公開の「合意議事録」に基づいた運用の実態から、在日米軍の「地位」の実態を紐解いた。 そのうえで、山本准教授は日米安保条約を支持する立場から「地位協定が抱える問題を放置することは、日米安保条約の脆弱性にもつながる」として、事実上の密約であり、日米地位協定本文に反した運用を可能にしている「合意議事録」の破棄を提案した。 今年9月には、著書の内容が評価され、「自由主義・民主主義・国際平和主義の思想の継承・発展に、最も貢献したと考えられる著作」を表彰する第41回石橋湛山賞(東洋経済新報社主催)に選ばれた。 同社は「本書は日米同盟を重視しつつ、米国に対しても、非は非と主張し続けた石橋湛山の名を冠する本賞にふさわしいものといえます」としている。
「表現が強すぎる」
授賞式は10月23日に開かれたが、この際のコメントについて、琉球大学側は11月に入り、ホームページへの記事の記載を要望。山本准教授自身が、以下のように原稿をまとめた。 《授賞式で、「国が国民を守らないので、地方自治体が住民を守るためになけなしの知恵を絞って苦心せねばならない、日米地位協定の現状が改善されることを願って、沖縄で研究を続けていきたい」と述べました》 山本准教授によると、大学側はこの「国が国民を守らない」というコメントについて、「国に対する表現が強すぎる」と、批判的な点を正すよう求めてきたという。BuzzFeed Newsの取材に応じた山本准教授は、こう語る。 「そもそも本の趣旨からして、国の姿勢に批判的です。そこからも外れますし、授賞式で述べ、その後新聞にも掲載されたコメントを変えるのはおかしいと感じています」 「琉球大学も日米地位協定の問題の当事者です。大学の上空には毎日米軍機が飛んでいて、授業やテストに支障が出るなど騒音被害を受けている。そのような立場にあって、『国に批判的』と忖度するのは、あるべき姿ではないのではないでしょうか」