意外と多い…1日に分泌される「唾液の量」と「その種類」
「心身の不調は自律神経が原因かもしれない」「自律神経のバランスが乱れている」などとよく耳にします。そもそも、自律神経とはどのような神経なのでしょうか? 簡単に言えば「内臓の働きを調整している神経」。全身の臓器とつながり、身体の内部環境を守っています。 【画像】“がん”が光って見える! 手術成功率を上げる「スゴすぎ新医術」 自律神経に関わる歴史的な研究を辿りながら、交感神経・副交感神経の仕組みや新たに発見された「第三の自律神経」の働きまで、丁寧に解説していきます。 *本記事は『自律神経の科学 「身体が整う」とはどういうことか』(講談社ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
なぜ梅干しを見ると唾が出るのか?
「パブロフの条件反射」をご存じの方も多いと思います。ベルを鳴らすと、イヌがよだれを流す現象ですね。ベルを鳴らすだけで、なぜよだれが出るのでしょうか? ベルが鳴ると餌をもらえる、そんな経験をイヌがしたことがあるからでしょう。この現象を1902年に見つけたのは、ロシアのイワン・パブロフ(1849-1936年)です。パブロフは、餌を与える人が近づくだけでイヌがよだれを流すようになることに気づき、興味をもちました。そこでイヌに餌を与える直前に、いつもメトロノームのカチカチ鳴る音を聞かせるような実験を組んでみたところ、やがてイヌは、メトロノームの音を聞くだけでよだれを流すようになったのです。ごはんの時間と思うのでしょうね。 メトロノームの音だけでよだれが出るようになるには、その音を聞くと餌がもらえるという経験をしなければなりません。経験と学習に基づいて起きるこのような反射を条件反射といいます。 私たちも「梅干し」と聞くだけで唾が湧いたりしますね。これも条件反射です。梅干しを食べたことのない人では、この反射は起きません。梅干しを食べた経験があり、そのときに酸っぱいという思いをしたからこそ、「梅干し」と聞くだけで、あるいは梅干しを見るだけで、自然と唾が湧いてしまうのです。 このように条件反射には、聴覚や視覚といった本来の唾液分泌とは無関係な感覚が絡んでいます。聴覚や視覚を認識するのは、大脳という脳のもっとも発達した領域。しかし通常「反射」といえば、大脳の関与しない反応を指します。それゆえ大脳が絡む条件反射は、ちょっと変わった反射なのです。 次に、唾液が出る普通の反射をみてみましょう。口の中の触覚や味覚に基づいて唾液が分泌される反射を、条件反射に対して無条件反射といいます。無条件反射は、生まれながらにして私たちに備わっている反射です。生まれたばかりの赤ん坊でも小さな拳を口に入れたり、ミルクを口に含んだりすれば唾液は出ますよね。唾液が増えるのは生後5~6ヵ月頃で、これは歯の萌出が刺激となっているのです。よだれが増えたら、もうすぐ歯が生えるかもしれません。よだれかけが必要なのは、唾液を飲み込む力がまだ弱いためでしょう。 唾液を分泌しているおおもとを唾液分泌中枢といいます。これは脳幹という脊髄のすぐ上の脳の領域にあります。先ほどの条件反射が起こる際には、大脳から脳幹に向かって働きかけがあるわけです (図2-1)。