トランプvsハリス、弱い候補同士の大接戦!【前嶋和弘の2024アメリカ大統領選、深層ウォッチ】
11月5日の投票日まで、ついに1ヵ月を切ったアメリカ大統領選挙。当初は再選を目指す民主党の現職、ジョー・バイデン大統領と、4年ぶりの返り咲きを狙う共和党のドナルド・トランプとの一騎打ち......しかも、トランプが大きく優勢と言われていたが、8月にバイデンが撤退を表明、代わりに副大統領のカマラ・ハリスが民主党の候補になったことで、一気に風向きが変わったようにも見える。 一時は「ほぼトラ」(ほぼ、トランプで決まり)とも「確トラ」(確実にトランプ)とも言われていた大統領選は、ハリスの登場で何が変わったのか? そして、残りわずかとなった選挙戦の行方を左右するのは何か? 国際政治学者でアメリカ現代政治に詳しい上智大学の前嶋和弘(まえしま・かずひろ)教授が読み解く、2024アメリカ大統領選の「リアル」。 * * * ■拮抗状態にあるアメリカ社会の分断 民主党と共和党、それぞれの大統領候補が、いずれも早い段階でバイデンとトランプに一本化され、候補者を決める「予備選」が事実上、意味をなくしました。また、バイデンが81歳、トランプが78歳(2024年10月時点)と超高齢な候補者同士の対決でした。 そして、6月末に行なわれたテレビ討論会で評価を落とした現職のバイデンが撤退を強いられ、代わりに現副大統領のカマラ・ハリスが予備選を経ずに民主党の大統領候補に選ばれました。今回のアメリカ大統領選は、まさに「異例づくし」と言えます。 しかし、まだ民主党の候補がバイデンで、「ほぼトラ」という言葉が飛び交っていたときから、私は一貫して「今回の大統領選ではどちらの候補にも大きく形勢を変えるような風は吹かないし、最後の最後まで、どちらに転ぶかもわからない」と言い続けてきました。 その理由は、今回の大統領選が今のアメリカ社会の極めて深刻な「分断」を反映したものであり、しかも、その分断が「拮抗状態」にあるからです。トランプ政権の復活を願う共和党支持層と、それをなんとしても阻止したい民主党支持層ではっきりと「色分け」がされているために、初めから「風が吹く」余地が極めて少ないのです。 では、民主党の候補がバイデンからハリスに代わったことで、こうした「分断と拮抗」の構図は変わったのでしょうか? 結論から言えば何も変わってないというのが私の見方ですが、付け足すなら、民主党の候補がハリスに代わったことで、トランプが思ったより「弱い候補」であったことが浮き彫りになったということです。