辰吉寿以輝が左拳を痛めても無傷の12連勝。対戦相手に「頬が骨折しているかも」の代償
プロボクシングのスーパーバンタム級(55・3キロ以下)8回戦が26日、大阪のエディオンアリーナ大阪第2競技場で行われ、元WBC世界バンタム級王者・辰吉丈一郎の次男で、日本スーパーバンタム級18位の辰吉寿以輝(22、大阪帝拳)が、プロ19戦で9勝9敗1分の戦績を持つ藤岡拓弥(26、VADY)を3-0の判定で下し、デビュー12連勝(8KO)を飾った。左手の拳を痛める緊急事態を乗り越えての勝利。辛口の父は試合後、何を語りどう評価したのか?
痛めていた拳を悪化させる緊急事態
控室に戻った寿以輝は、まっさきに左手のバンデージを取ってそこに氷嚢をあてた。拳部分がどす黒く腫れている。 「痛いか?」 父の丈一郎が心配そうに声をかけると小さな声で言った。 「めちゃくちゃ痛い」 ハードパンチャーゆえの宿命。元々痛めていた左拳が、試合中に悪化していたのだ。 もう一つの控室では敗者の藤岡がカットした左目上に絆創膏を張って頬に氷を当てていた。 「めちゃくちゃ打たれましたね。バンバンという感じで…ペースが早かった。試合前からちょっと頬を痛めていまして……骨が折れているかもしれません。明日医者に行きます」 消耗戦を耐え切った代償は凄まじいダメージとなって藤岡を傷つけていた。 辰吉の12戦目は不完全燃焼に終わった。 スタートからパワー全開で攻めた。だが、4連続KO勝利を意識する余り、「倒そうと狙いすぎた」ことが力みを生む。左のジャブからつなげた左フック、右ストレートが大振りで、しかも、一発一発を飛び込んでフルで打とうとするから正確にヒットできない。 「パンチも見えたし当たったので正直すぎました」 そして左拳を痛めるアクシデント。 相手の前進を止める武器がないので2ラウンドからは簡単に距離をつめられ、密着戦に持ち込まれた。 「あの距離は好きな距離やない」 それでも激しいボディ攻撃で応戦した。左右のボディを乱打。4ラウンドには、右のボディストレートをみぞおちにめりこませて動きを止めた。だが、藤岡は「効きましたが倒れたら恥ずかしいやないですか」と、キャンバスに横たわることを拒否した。 「相手の重心が下で、うまく押された。(手ごたえのあるパンチは)何回かはあったんですけど、ベストショットやない。効いていなかった」 クリンチで潰そうともしたが、レフェリーに「減点にするぞ」と注意された。 周囲がスタミナを心配するほど激しく打ち合った。さすがに息が上がって腰が浮き、そこにうまくもぐりこまれたが、ボデイの応酬では負けなかった。 「あそこで下がったらびびっていると思われるんで。びびってないんで」 父譲りのメンタルである。