NPBのドーピング検査に問題はないか?
またNPBは、世界アンチドーピング機構(WADA)及び日本アンチドーピング機構(JADA)に加盟していないため、その検査、監視手法も甘い。WADA所属の競技団体のドーピング検査は、急激に記録が伸びた選手や、明らかに肉体が変化した選手らをマークして決め打ちで検査を行ったり、登録選手の居場所情報の提供などが義務づけられている。例えば、日本の五輪種目で、強化指定選手に指定されると、数時間ごとに、「今、どこで何をしているか」をメールなどで報告する義務が生じるほど厳しい。 筆者は、某五輪選手と食事をしていた際、何度も「今、どこにある、どの店で誰と食事をしている」という居場所情報をメールで送っていた姿に、「ここまで徹底するのか」と驚かされたものだ。つまりドーピング処置を受ける時間や場所や薬物提供を受ける機会をなくすために、その抑止効果として居場所を確認しているのだ。 確かに抜き打ち検査の実施は、薬物使用の抑止力としての役割が大きいが、NPBのそれはあまりにも回数が少ないため、抑止力として本当に有効かどうかは疑わしい。今後、現役中に覚せい剤や「グリーニー」と呼ばれる興奮剤などを使う選手が出てくることを防ぐためには、まず大々的にアナウンスした後にドーピングの検査回数を、即刻、増やすべきなのだ。 ドーピング検査には、一人約5万円の費用が必要とされていて、ドーピング検査回数を増やすための経費をどう捻出するのかという問題もあるらしいが、清原容疑者が現役時代に使ったかどうかの真偽は別にして、ファンから失った信頼を取り戻すためには、早急に予算を組みなおす必要のある案件だろう。NPBは現在、各球団のキャンプ地を訪問して、有害行為の再発防止およびアンチ・ドーピングに関する講習会を開き、啓蒙活動を進めているが、さらなる再発防止策を真剣に検討して実施すべきである。また今後、ドーピングに関しての違反者には、ボランティア活動や、薬物使用からの社会復帰運動への参加を義務づけるなどの新たなカリキュラムも必要だと思う。 元巨人OBでヤクルト、西武で監督まで務めた広岡達朗氏も、「球団の管理責任はおおいにある。そしてコミッショナーが、しっかりとこういう問題についての事前の策を練っていなかったことも問題だ。教育、啓蒙と同時に、ドーピング検査もできるかぎり厳格に行い、今後の再発防止策を練るべきだ」と、NPBのコミッショナーのリーダーシップの欠如を指摘している。 賭博事件に続き、元大スターの覚せい剤所持事件……球界は、今こそ襟を正さねばならないだろう。