ミスチルやオザケンは、韻を踏む天才。研究家が「完璧」な歌詞を解説
J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。10月14日(水)のオンエアでは、シンガーソングライターの吉澤嘉代子と、韻の解説書『声に出して踏みたい韻』の著者で韻研究家の細川貴英をゲストに迎え、「J-POPに潜む韻の世界」についてお届けした。
韻とは母音を合わせること
『フリースタイルダンジョン』や『高校生RAP選手権』を発端とするフリースタイルラップ人気の中で、世間に知られるようになったのが「ラップで韻を踏む」というヒップホップ文化だ。実際にはヒップホップだけではなく、J-POPの歌詞の中にも「韻」がたくさん潜んでいる。 オンエアでは、まず細川が「そもそも韻とは何なのか」を解説した。 細川:一言でいうと「母音を合わせること」だと思います。 あっこゴリラ:韻とダジャレの違いは何ですか? 細川:ダジャレの場合は、母音だけじゃなくて子音も含めて合っているっていうのが定義になっています。 あっこゴリラ:なるほど~。じゃあ、ダジャレの方が厳しんだ。 細川:そうですね。韻の方は母音だけでゆるいので、そのかわりたくさん踏んでくださいってことなんですよね。 テーマ「J-POPに潜む韻の世界」を掘り下げていく上で、細川がまず取り上げたアーティストは、Mr. Children。 あっこゴリラ:ミスチルはめっちゃ踏んでますよね。 細川:はい。昔からいろんなタイプの韻を踏んでいます。名曲『名もなき詩』や『シーソーゲーム』などの歌詞でも韻を踏んでいます。 歌詞の「ニシエヒガシエ 必死で猛ダッシュです」という部分は、母音が「いいえいあいえ」「いいえおあうえう」で完全に合ってはいません。しかし、この違いをカバーするために「もうダッシュです」の部分を「ヒガシエ」に寄せて桜井さんが歌っていて、かつ最後の「す」に音を乗せないことで、「必死で猛ダッシュです」の母音も「いいえいあいえ」のように無理やり聞こえさせる荒技を使っています。 さらに細川が「韻を極めたミスチルの曲」として挙げたのが『GIFT』。どの部分で韻を踏んでいるのだろうか。 細川:この曲の中で一番わかりやすい韻は、「僕は探してた 最高のGIFTを」の部分です。次に同じメロディーで「僕の両手がそれを渡すとき ふと謎が解けるといいな」とあって、「GIFT」と「きふと」が同じ母音「いうお」で韻を踏んでいます。 あっこゴリラ:これすごい! 細川:J-POPで文章をまたいで韻を踏んでくるのは反則ですよね(笑)。 吉澤:これはもう発想にないですね。 細川:さらにこの後、2番の同じ部分の歌詞でも「自分の胸に聞くと」、ここも「聞くと」の母音がさっきと同じ「いうお」になっています。この3つを並べると、「ぎふと きふと きくと」で、「韻の踏み始めと踏み終わりは、母音だけじゃなくて子音も合わせる」テクニックも自然に使われています。 細川は、ラップ界隈では有名な韻の検索サイト「韻ノート」の開発者でもある。この韻ノートとは、入力したワードで無限に韻が踏めるサイトで、日本最大級200万語以上の韻を踏む言葉を検索可能。さらに、母音検索や漢字での検索も可能だ。このサイトを作ろうと思った理由を訊いた。 細川:韻のおもしろさがあまり世間に知られていないと思っていました。みんなの“韻リテラシー”を高めたいと思い、韻に対する理解を高めることを目標に頑張ってます。本業がWebエンジニアなので、これを作ろうと思いました。