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実は観たことなかった……。アーティストたちが同時に『フォレスト・ガンプ』を自宅観賞

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エムオンプレス

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。 実は観たことなかったあの名作をこのタイミングで。それぞれの自宅で「せーの!」で観始めて、終わったらオンラインで感想会。映画館が休館しても映画はいくらでも楽しめる! 【動画】『フォレスト・ガンプ/一期一会』予告編 ---------- みんなの映画部 活動第63回[後編] 『フォレスト・ガンプ/一期一会』 参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S) ---------- ■ガンプは自分の血や出自をナチュラルに乗り越える レイジ 俺とかアメリカの歴史はまったく勉強不足なんですけど、ただフォレスト・ガンプって設定からして本物のイノセントマンっていうか。物語の背景にはアメリカの歴史が流れてるけど、そこの世間とか社会の価値観とは完全に切れた人ですよね。 小出 そうそう。そして成長していく彼のもとには常に黒人の人が一緒にいるわけですよ。例えばベトナム戦争に出兵した時の親友のバッバくん(ミケルティ・ウィリアムソン)。彼との友情がその後のフォレストの人生にすごく大きい影響を与えるわけ。で、そのあと負傷して戦地から帰ってくるくだりのところで、今度は黒人の人から卓球を教わるんだよね。 だけど社会的には、肌の色をめぐることがずっと起こってる。フォレストの幼なじみで最愛の女性になるジェニー(ロビン・ライト)がさ、フォークシンガーのジョーン・バエズに憧れていて、ベトナム戦争のときにヒッピー文化に傾倒していく。その先で反戦運動してる友達ができて、ついにはブラックパンサー党の人たちとも繋がりができる。ブラックパンサーって黒人民族主義運動の過激派だから、言ってしまえばクー・クラックス・クランの真反対の存在。 つまり、あの段階で出自的な意味ではフォレストとジェニーは真反対に行くんだよね。だけど、フォレストにそんなことは関係ない。ナチュラルに乗り越えてる。自分の血とか出自とか。 ──政治思想的にもね。 小出 うん、政治思想も本来的には真逆にいてもおかしくない。でも、自分の思うままナチュラルにずっと行ったり来たりしてる。彼の思うままっていうのは「ジェニーがいるところにいたい」っていう、ただそれだけなんだよね。自分が戦争の英雄として勲章とかもらっているベトナム帰還兵でありながら、ヒッピー側にも行っちゃったりもするし。 レイジ あそこ(ワシントンでの反戦集会のシーン)でフォレストが何を言ってたか、結構気になるっすよね。 小出 集会を邪魔しようとした男にマイクのプラグを引っこ抜かれて、肝心のスピーチが聞こえないという演出。気になるよね。 レイジ ベトナムでできた友達が死んじゃった、みたいなことなんですかね。シンプルに。 小出 そうかもしれない。あのシーンの最後では、フォレストがジェニーに「アラバマに帰るべきだ」って言うじゃん。彼はふたりの生まれた故郷に帰りたいって言っただけなのに、あの段階ではジェニーは「やっぱり帰れない」ってなっちゃう。彼女はフォレストと自分がずいぶん違う場所にいることを自覚しているからね。そういう切なさ、すっごいあった。 ──ラブストーリーとして観るなら、初恋の人とすれ違い続ける話ですもんね。無垢な男がずっと空回りしてるような。 レイジ フォレスト・ガンプはMr.ビーンですよね(笑)。 小出 あははは。まあ天然キャラだからこそ、ある種「なんでもあり」というか、意図せずに歴史の重要な場面に出くわしたりする。ニクソン大統領に謁見したあと、ウォーターゲート事件(1972年の政治スキャンダル)の盗聴の現場をたまたま見つけて電話しちゃったりとか。 レイジ その事件の映画観ましたよね? ──ウォーターゲート事件の前日談に当たる内容ですけど、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017年/監督:スティーヴン・スピルバーグ)ですね(みんなの映画部 第43回)。 レイジ それもトム・ハンクスがやってませんでしたっけ? 小出 俺もそう思った(笑)。それでフォレストが除隊したあとは、バッバとの約束を守ってエビ獲り船をやって、会社を起こしちゃって、それが大成功したりする。 レイジ ね、すっげえ早い段階でアップルに投資したりとかしちゃって。 小出 本人はフルーツ関係の会社だと思ってるっていう(笑)。それで得た大金を教会にごっそり寄付して、バッバの家族を経済的に支えて、黒人たちに感謝される存在になっていくと。出自とか土地とかっていうところを飛び越えて、その境地にたどり着く。 ■やっぱ伝説レベルの名作はすごい レイジ フォレスト・ガンプっていうのは基本的にずっと走ってるイメージですね。常にあいつは走ってるんじゃないですか(笑)。 小出 あの「走る」って、人種や血や、きっと文化や宗教なんかも飛び越えていくっていうメタファーでもあると思うんですよ。国の横断も、フォレストは自分がただ走りたいから走ってるだけなのに、人々が勝手に意味を見出していく。これは女性の権利のためですか? とか、環境問題を訴えるためですか? とかさ。こうやって周りが意味付けしていくのは面白い現象でもあると思うんですよ。 ──言わばフォレスト・ガンプは「鏡」で、彼の行動を受け取る側の問題意識が「意味」として反映されるイメージですよね。 小出 そうそう。だから「走る」ことからそれそれが人生のメッセージを受け取って、賛同者がついてくるとかさ。そう考えるとフォレスト・ガンプっていうのは天使みたいな……だからバス停で風に舞っているのが鳥の羽なのかなとも思ったし。 福岡 なるほど、確かに。あの羽はジェニーなのかな、とも思ったけど。 小出 そうも取れるよね! それはもう、こっちの解釈なんだと思うんだけど。 レイジ あとはもう、もっと大きい目で見て「風に吹かれてるだけ」みたいな。 ──ジェニーがストリップバーみたいな店のステージで『風に吹かれて』(ボブ・ディランの名曲。ジョーン・バエズもカバーした)を歌うシーンも示唆的ですね。 福岡 決められた運命もありつつ風に流されて……っていうフォレストのセリフもあったよね。 小出 そこすごい深いなと思った。「風に流される」のも運命だと捉えたら運命。でもその自由さを見れば、運命から解き放たれてるとも言えるし。ダブルミーニングってやつだよね。 福岡 ああ、すごいね。歌詞として完璧やな(笑)。 小出 それを最後に「両方とも一緒にある」って言い切ってるのがすごい。この不思議な人生は運命(さだめ)で決められているのか、それとも宙を舞う鳥の羽のように風で漂ってるだけのか……いや、たぶん両方同時に起きてるんだっていう。シメが完璧!!!!!! って思いました。 レイジ 哲学っすね。やっぱ伝説レベルの名作はすごいな。さっきまでの『龍が如く7』やりてーって気持ち忘れちゃったっす(笑)。 小出 ね。めっちゃしゃべっちゃったもん(笑)。やっぱすごい映画だね。こうやって観ると。 福岡 全然古いって思わないよね、表現も考え方も。 TEXT BY 森 直人(映画評論家) ★[前編]部員たちの『フォレスト・ガンプ』への第一印象はM-ON! MUSICにて公開中★

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