自民党・石破茂氏が会見(全文1)独立を守るための組織の否定は極めて異常
独立を守るための組織、軍隊が否定されているということは極めて異常なこと
かつてマックス・ウェーバーは、『職業としての政治』という論文の中で、軍と警察という実力組織、日本語訳では暴力装置っていうことになってますが、それを言うと騒ぎになるので言いませんが、軍と警察という実力組織を独占的に合法的に所有するのが国家であるとマックス・ウェーバーは論じています。似たような組織のように見えて、その役割はまったく違います。国の独立を守るのは軍隊なので、その作用は対外的に外に向けて働くものです。内に向けて働くものではまったくありません。外に向けて作用するものであるが故に、その行動は国際条約、あるいは確立された国際慣習に従うものでございます。 警察が外国に行って警察権を行使するということはありません。その作用は対内的なものですから、その行動は国内法によって律せられるのも、これまた当然のことでございます。 独立を守るための組織である軍隊が否定されているということは極めて異常なことでありまして、独立したからには政治的な立場とかイデオロギーとか、そういうものとまったく関係なく、そういう組織を持つということは極めて当然のことなのですが、日本においては軍隊を持つ、それは侵略戦争をするということだ、戦前の日本に戻ることだという、そういうような考え方が根強くありまして、なかなか国民の広い理解を今まで得られないで来ました。 独立を果たしたからには、それに必要な組織をきちんと書くべきだというのは実に当たり前のことなのです。そして自衛隊は、名前はどうでもいいんですけれど、独立を守るための組織でありその行動は条約ならびに確立された国際慣習に従うべきだということは、どうしても入れておかなければなりません。そして、専守防衛ってなんだろうか。あるいは集団的自衛権ってなんだろうかっていうことにも、われわれ日本国民はどこかできちんとした答えを見いださなければなりません。
集団的自衛権が認められないことは国際常識に恐ろしく反する
日本では、集団的自衛権とはアメリカと一緒になって世界あちらこちらで戦争をする、とても悪い権利であるという考え方が一部に根強くあります。これは日本だけの非常に特別な現象であります。国際連盟が失敗したので、その原因はアメリカ合衆国が参加しなかったというのが大きな原因であったので、国際連合をつくるときにはアメリカが反対しないようにという十分な注意が行われました。第二次世界大戦は多くの犠牲を多くの国に与えました。もうあんなことは嫌だということで国際連合というものを組織し、国が勝手に自衛戦争もしてはいけないよ、どこか悪い国から侵略をされたら国際連合が駆けつけて、そういう悪い侵略の国は追い払うよというのが国際連合の精神であります。 しかし、アメリカ合衆国は自分の国の利益がほかの国の考えで左右されるのを非常に嫌う国でございますので、国際連合は何を決めようとアメリカが反対したら何も動かない組織にしてくれよ、という強い要請をいたしました。それが拒否権というものでありまして、なんでアメリカだけがそんな権利を持つんだ、うちにもよこせと言ったのがソビエトでありイギリスであり、フランスであり中華民国であります。これが5カ国の安全保障常任理事国の拒否権といわれるものでございます。ソ連の権利はロシアが引き継ぎ、中華民国の権利は後継国家ではありませんが中華人民共和国がそれを後継の形で引き継いでおります。 侵略されたら国際連合が助けに来てくれるはずなんだけど、5カ国が反対したら助けに来てくれない。それはひどいじゃないかということに当然なります。だから国連憲章には、国際連合が来てくれるまでの間、まあだいたい来てくれないんだけど、来てくれるまでの間、自分の国は自分で守っていいですよという個別的自衛権と、関係の深い国々同士がお互いに守り合っていいですよという集団的自衛権を、わざわざ国連憲章は認めているのです。 これが認められないということは、国際常識に恐ろしく反するものであり、憲法を、どこをどう読んでも個別的自衛権はよくて集団的自衛権は駄目だ、なぞということは論理的に出てこない。9条をめぐる理論はこのことに終止符を打つものでなければ駄目だと私は固く信ずるものであります。私は大臣のときに日本は専守防衛に徹しますと。これに反することはいたしませんと何度も答弁をしてきました。しかしそれが最も難しい防衛戦略であるということをきちんと国民に説明してこなかったことは私自身、強く反省をしておるところであります。