『海に眠るダイヤモンド』「荒木リナ」に込められた切実な思い 誠と玲央に血縁の可能性?
「端島が終わる」――そのセリフが何度も出てきた『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)第7話では、坑内火災事故を機に閉山へと向かっていく端島とその灯火を守ろうとする鷹羽鉱業の炭鉱夫、さらに職員たちの戦いと決断が描かれた。 【写真】もしかすると最後かもしれない進平(斎藤工)の笑顔 通称“軍艦島”と呼ばれ廃墟となった現在の端島の姿を知っているからこそ、我々は鉄平(神木隆之介)たちがどのような未来へと向かっていくのかをある程度予感はしていた。ただ、現代(劇中の2018年)でいづみ(宮本信子)が、その後に鉄平がどうなったのかいまだに分からないと玲央(神木隆之介・一人二役)に話しているように、1964年、端島で何が起こっていたのか、その過程を知るものは少ない。史実とフィクションが綯い交ぜになった『海に眠るダイヤモンド』において、進平(斎藤工)が坑内火災事故の犠牲者になろうとしている。 残酷なのが、その命の灯火を途絶えさせてしまったのが形式上、弟の鉄平かもしれないということ。炭鉱長の辰雄(沢村一樹)による水没放棄の決断を坑内で聞いた鉄平は、海水が流入してくるバルブに手を置き、意を決して回していく。それは自らが端島を終わらせるということ。端島炭鉱で採掘ができなくなることは、そこで暮らす人々の生活も途絶えるということを意味する。突如“執行人”を命じられた形とも言えるだろう。 高島から応援に来た職員の石橋(山澤亮太)に放送の内容を伝える鉄平の力のない目も印象的だが、それ以上に鉱員札が並ぶ中で「448」のまま裏返ったままの「荒木 進」の札を見つける鉄平の表情に思わず息が詰まる。その頃、電気が消えた坑道で倒れた進平が海水に浸かり始めていた。一酸化炭素中毒で一度は亡き妻・栄子の幻覚を見るものの、正気を取り戻し帰りを待つリナ(池田エライザ)と誠の元へと歩を進めるものの、進平は膝をつき力尽きてしまった。 冒頭で触れた「端島が終わる」というセリフとともに、この第7話でリフレインするのは進平が言い聞かせるように口にしていた「荒木リナ」という名前。進平とリナは籍を入れていない。戸籍上は荒木の性ではないからこそ、進平はリナにお前は立派な荒木家の家族だと話していたのが2人の最後の会話になろうとしている。 次回、第8話からは、爆発事故を食い止められず廃鉱し4カ月が経った端島を舞台に最終章へと突入していく。予告では母・ハル(中嶋朋子)の「リナさんと一緒になるの」というセリフの後に、誠を抱きリナの横に並ぶ鉄平の姿が。誠が玲央の父親なのではないか、という説がSNSを中心に根強く、このまま物語が進めば、誠が荒木家の血筋にあり、鉄平が誠の育ての親ということになる。 気掛かりなのが、第5話でリナを守るため進平が射殺した小鉄(若林時英)のこと。小鉄は博多のクラブ・フロリダから逃げ出したリナを見つけ出し、リナの情報をハヤブサ会の組員に逐一報告していた。幸せムード一色だった第6話での展開も相まって、すっかりハヤブサ会の存在が忘れさられているが、第8話予告にある鉄平の「兄貴は正しくないこともした」というセリフや第7話冒頭にも再びインサートされたリナが誠を抱いて朝靄の中で進む手漕ぎ船に乗り端島を脱出するシーンへと繋がっていく、そんな予感がしている。
渡辺彰浩