「麹でキャラメリゼ」した1皿も。ムンバイのベストレストランは『至高』だった!
ムンバイは美食でも注目され始めている。その最先端をリードするのが「Masque(マスク)」だ。 起業家のアディティ・ドゥガー氏とシェフのプラティーク・サドゥ氏が2016年に創業したマスクは、インドの食材に光を当てたテイスティングコースをムンバイでいちはやく提供し始めたパイオニアだ。 2020年に「アジアのベストレストラン50」で「注目すべきレストラン」に入ると、2021年にはランキング入りを果たし、なんと2023年と2024年の2年連続で「インドのベスト・レストラン」を獲得。破竹の勢いでデリーの「インディアン・アクセント」と首位争いを競い合うほどの地位を築いた。 ◾️5歳で料理に目覚め――インドとニューヨークの料理学校で学ぶ プラティーク・サドゥ氏から料理長を引き継ぎ、現在チームを支えるのが、ヴァルン・トトラーニ氏だ。ムンバイ生まれのヴァルン氏は、料理上手の母の料理で育ち、5歳の頃にはすでに料理の楽しさに目覚めていたという。インドとニューヨークの料理学校で学んだあと、2016年からコミシェフとしてスタートし、2022年に料理長に着任。「The Best Chef Award」でも受賞するなど若手シェフの注目株だ。 ローカル食材にこだわりを持つマスクでは、10皿のテイスティングコースのみを提供している。「それまでインドでは良い食材は手に入らないと思っていたが、マスクのチームに参加してインド中を旅するうちに、まだ知られていない良い食材がたくさんあることに気づいたんです。例えばラダック地方のシーバックソーン(サジー)は、大きな発見でした」とヴァルン氏は目を輝かせる。 季節ごとに変わるテイスティングコースは、5950ルピー(約10900円)という価格だ。内容からすると決して高価には感じないが、ムンバイではまだこうしたテイスティングコースは珍しく、「価格設定でも苦労している」と打ち明ける。席に着くと、アレルギーはもちろん、食べられない肉の種類がないかなど細かく確認を受けたのも、宗教上の食事の制約が多い国ならではだ。 マスクではベジタリアンの客が約半分を占めるため、コースもノンベジ/ベジの2種類を用意している。また、ジャイナ教では根菜も禁止といったように、人によって提供できない食材が多いこともコース造りの難しさだと語ってくれた。