ラグビーコラム 母校支える車いすコーチの奮闘 天理高・木村豪志さんが11・17奈良大会決勝に挑む
【ノーサイドの精神】第104回全国高校ラグビー大会奈良県予選決勝は11月17日、橿原公苑陸上競技場で行われる。全国でもトップレベルの実力を持つ天理と御所実が決勝で激突するのは30年連続。この激アツのライバル対決に新たな立場で臨む青年がいる。 天理OBで、今季から母校のアナリスト兼任でスタッフに名を連ねることになった木村豪志コーチ(20)。父の影響で小3からラグビーを始めた木村コーチは同校3年だった2021年夏、練習中に頸椎脱臼の重傷を負い、今は車いすの生活を送る。 事故の翌年、当時の松隈孝照監督(現GM)から勧められ、後輩たちの試合の映像を見て入院先の病室からアドバイスを送るようになった。この年、天理は4大会ぶりに花園に出場し、4強に進出。木村コーチの1学年下で当時の太安善明主将(現天理大2年)はこのとき、「豪志さんも一緒に戦ってくれていると思っています」と話している。 そして昨年夏、地元・奈良に帰ってきてからはリハビリとトレーニングの合間をぬって母校に通い、これまでの分析に加え、グラウンドで100人以上いる部員のうち試合に出ないジュニアのメンバーたちを指導を手伝うようになった。練習中は車いすで選手の間を細かく動き回り、声をかけ続ける。 「自分がプレーで見せることができない分、どう言葉で伝えるかを考えています。自分が言ったことでプレーが変わるのはうれしい」といい、昨年はジュニアで見ていたメンバーが今年は試合メンバーに昇格するなどコーチとしての喜びも感じている。 いずれは天理大に進学する予定だが、現在は機能回復を優先し、リハビリに専念している木村コーチにとってラグビーは心身ともに良い刺激になっているようだ。 チームにとっても欠かせない存在になっている。リーグワン大阪でプレーし、母校に保健体育教諭として戻ってきた就任2年目の王子拓也ヘッドコーチ(29)は「真面目な子で、後輩の一人ひとりに寄り添ってくれている」と目を細め、「生徒たちにとって身近に頑張っている(人の)姿があることは大きい」と強調する。 そんな木村コーチを支える1人に大阪・常翔学園出身の金沢功貴コーチ(26)もいる。同校1年だった2013年夏、夏合宿の練習中の事故で脊髄を損傷。車いす生活を送っているが木村コーチと同じくラグビーへの情熱を失うことなく、現在は母校で分析担当を務めている。