安倍晋三独占インタビュー/危機の指導者とは〈リーダーには決断力と兵を養う“情”が必要だ〉――文藝春秋特選記事【全文公開】
「文藝春秋」2月号の特選記事を公開します。/安倍晋三(元内閣総理大臣) ◆ ◆ ◆ 昨年11月、清和政策研究会の会長に就任しました。我が人生を振り返ると、初当選を果たしたのは1993年。議員生活30年も間近です。これも、一つの節目であるように感じます。 はや私も67歳。思えば父の安倍晋太郎はおよそ30年前の1991年5月、67歳でこの世を去っています。1986年に清和会会長に就任し、次期総理と目されるなかでの病死でした。いよいよ、あの時の父の年齢を超えていくのかと、感慨深いものがあります。 この30年、国際情勢はもちろん、国内の政治・経済は構造的に大きな変化を遂げました。今後も変化は加速していくと予想され、次世代の政治リーダーは非常に難しい舵取りを迫られることになります。 そこで今回は私の総理としての経験も踏まえつつ、日本はこの難局をどう乗り越えるべきか。そして、次世代のリーダーの条件について、お話ししたいと思います。 インターネットが政治を変えた まず国内の政治に目を向けると、この30年間で二つの大きな変化がありました。一つは選挙制度の変化です。私が初当選した頃は、中選挙区制で派閥政治の全盛時代。さながら戦国時代のような激しい権力闘争が繰り広げられていました。それが、翌94年に小選挙区比例代表並立制が採用されてからは、派閥の合従連衡中心の政治は徐々に姿を消していきます。また選挙においては、党の顔である総裁の人気や知名度、候補者の掲げる理念や政策が、当落を左右するようになったのです。 もう一つのインパクトは、インターネットの登場でした。若者世代はテレビや新聞などのオールドメディアではなく、ツイッターなどのSNSから情報を仕入れるようになった。安倍政権は若者世代から一定の支持を獲得していましたが、SNSの積極的な活用も功を奏しました。だからこそ、テレビや新聞が政権批判一色だった時でも、継続的な支持をいただくことができたのだと思います。対照的に、オールドメディアの影響力は、局所的なものになってきています。 国際社会に目を転じると、政治も経済も、グローバル化が急速に進行しました。首脳会談も昔と比べて遥かに回数が多くなりました。たとえば、私より以前に歴代最長政権だった佐藤栄作元首相でも、外遊は延べ11回に過ぎません。一方、私はロシアのプーチン大統領との首脳会談だけを数えても、27回にもなる。首脳会談は計1075回、訪問先は延べ176の国・地域と桁違いの数字となりました。 つまり、首相官邸が外交力を発揮する時代になった。党内や省庁間での議論はもちろん大事ですが、それぞれの利害調整に時間を要するため、スピード感を伴う意思決定は難しい。国際社会の急激な変化に対応するには、官邸が強力なリーダーシップを発揮する必要があるのです。官邸外交は世界ではすでにスタンダードで、各国はNSC(国家安全保障会議)を通して外交安全保障政策を進めていました。日本も2013年に首相直轄のNSCを創設。外交・軍事・情報を官邸で一元化し、政治的決定をおこなうことが可能になりました。
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安倍 晋三/文藝春秋 2022年2月号