子どもの近視【100歳まで見える目】
◇目が悪くなるってなに?ー近視は目が変形する病気ー
「あの人は本の読み過ぎで目が悪くなって」ー。なんて言い回しは過去のフレーズでしょうか。さまざまな病気で目は見えなくなりますが、その中で遠くが見えなくなるのが近視です。 近視の正体は目の前後の長さである眼軸長が長くなった状態です。イメージがなかなか湧きづらいかもしれませんが、目が前後に伸びる方向に変形すると考えてください。そして現在、近視が進行するメカニズムがかなりのところまで分かってきました。
◇近視は遺伝+環境によって進む
近視に関する研究論文数はうなぎ登りです。ここ30年で5倍以上になっています。研究が進んだのはそれまでの蓄積もありますが、近視の人の割合が急増しているためもあります。これらの研究から、近視の進行には体質的になりやすい遺伝と、過度の近業などの生活環境が影響することが分かってきました。 遺伝に関しては親が近視だと数倍程度、子どもも近視になりやすいと言われています。しかし、遺伝子は100年前も変わるわけもなく、近視の人が増加しているのは生活環境の変化が原因です。
◇近視パンデミック
現在、アジアの先進国では新成人で近視の人の割合が8割を超えるようになってきています。これは50年前の実に5倍です。わが国でも学校保健統計調査において、裸眼視力1.0未満の子どもたちは年々増えています。近視は主に小学校から中学校にかけて進行していくとされています。 さらに慶応大学からの報告では小学校入学時で既に6割ほどに近視が認められ、近視の始まりは幼稚園から始まっている可能性が指摘されています。その原因となる生活環境の変化としては、近業の増加と屋外活動の減少が挙げられます。 近業とは、近くのものを見る作業です。古くは学業との相関が指摘され、いわゆる「お受験」に代表されるような勉強開始時期の低年齢化も関係しています。学歴と近視が相関するとの報告もあります。スマートフォンや携帯ゲーム機の普及といったデジタルデバイスの使用も近視の増加に拍車を掛けています。長崎大学からの報告では、日常生活よりゲームを優先する「ゲーム依存症」に当てはまる小学生が7.3%だったと報告されています。手に持てるデジタルデバイスは画面が目に非常に近い状態にあるため、その使用は近視進行のリスクの重要なものの一つです。 逆に、屋外活動は近視進行の抑制因子です。台湾では国策として、子どもたちが1日に120分以上の屋外活動を行えるように法整備を行い、時代の流れに逆らって近視児童の割合がどんどん減少しているとのことです。なぜ屋外活動が良いかは議論がされていますが、屋外で遠くを見ることの他に太陽光線が目や身体に良い影響を与えるのではという研究があります。中国からは赤い光をのぞき込むような機械が開発され、近視進行抑制に良好な成績を上げています。慶応大学からは紫の光が良いのではという詳細な実験が行われています。