年収1円の違いで所得税が「10%」上がるって本当!?誤解されやすい「超過累進課税」を説く
税金の話をしていると「年収が900万円を超えると所得税が一気に上がる」といった意見を耳にすることがあります。これは「課税所得が900万円以上になると税率が23%から33%にアップする」ことへの誤解が原因であると考えられます。 所得税の計算は「速算表」で簡単に求められますが、今回は計算に関するよくある勘違いについて解説します。間違った認識で年収をおさえることがないよう、参考にしてみてください。 ▼会社員で「年収1000万円」以上の割合は? 大企業ほど高年収を目指せる?
所得税の「超過累進課税」と勘違いされやすい年収900万円の壁
所得税の計算は「超過累進課税」が採用されていて、所得が多くなるほど高い税率が適用されます。国税庁が公表している「所得税の速算表」は表1の通りです。 表1
出典:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)No.2260 所得税の税率」を基に筆者作成 課税所得は、1000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。 例えば年収900万円とそれより1円だけ少ない場合の所得税の算出方法について、以下のような計算をしてしまうと間違いになるため注意が必要です。 ■年収899万9999円の場合 899万9000円×23%=206万9770円 ■年収900万円の場合 900万円×33%=297万円 この計算では、年収1円の違いで税率が10%上がって、90万230円も多く所得税を支払うことになります。これでは年収900万円に達しないように調整したほうが得策に感じられるでしょうが、ここには大きな勘違いがあるようです。
「年収900万円以上で所得税が一気に上がる」の勘違い
「年収」に税率を掛けて所得税を算出すると勘違いしている方もいるようですが、実際は「課税所得」で計算します。そこでまず、年収と課税所得の違いについて理解する必要があります。課税所得とは、所得から所得控除を差し引いた後の金額のことです。そのため、課税所得は実際の所得よりも少なくなります。 例えば会社員の場合は、給与所得控除が適用されます。年収900万円の場合は給与所得控除額の上限である195万円が差し引かれて課税所得は705万円です。これ以外にも基礎控除で48万円が差し引かれ、雑損控除・医療費控除・社会保険料控除・扶養控除・配偶者控除など、所得控除の要件にあてはまる場合は、課税される所得がさらに低くなるでしょう。