再生可能エネルギーの導入、なぜ日本は遅れている?専門家「技術やコストでなく…」
「電気は貯められない」は過去の話――。なぜいま、「貯める」技術が重視され、急速に進化を遂げているのか。米国立ローレンス・バークリー研究所の白石賢司研究員(エネルギー政策学)に聞きました。(聞き手・荒ちひろ) 【写真】電気をためる技術で躍進する中国を象徴する刀の形をしたEV用の「ブレードバッテリー」
白石賢司(しらいし・けんじ)
米国立ローレンス・バークリー研究所研究員 1979年生まれ。米カリフォルニア大で博士号を取得。環境省などで地球温暖化対策の立案を担当。2021年から同研究所で電力長期計画と再エネ政策に関する研究に取り組む。
地球温暖化を防ぐため、日本を含めた先進諸国は、2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするという野心的な目標を掲げている。そのために化石燃料からCO2を出さない再生可能エネルギーへの転換は必須であり、現在の技術でも脱炭素化の大部分は十分に実現可能だというのが世界的な共通認識だ。 電力は、最も脱炭素化しやすいエネルギーだ。現在の世界全体の発電量のうち再エネ比率は約13%だが、太陽光と風力を中心に、今後7、8割を占めるようになると考えられている。 ただ太陽光や風力といった変動性再生可能エネルギーには、昼夜や季節によって発電量が変わる「変動性」と、天候などの条件によって発電量が予測できない「不確実性」という特徴がある。これまでは主に火力発電が供給の調整役を担ってきたが、脱炭素化で利用が難しくなる。そこで需給バランスの時間的なズレを調整するための「貯める」技術がカギとなる。 エネルギーの貯め方には数時間から数十時間で充電と放電を行う短期間の貯蔵から、数日から数カ月、さらに長期間にわたって貯めておくものまであり、それぞれに特徴がある。 これまでは位置エネルギーを利用する揚水発電が、唯一大規模に実用化された貯蔵手段だったが、近年、リチウムイオン電池など蓄電池が急速に発展している。要因の一つが電気自動車(EV)の台頭で、大量生産と技術革新によって大幅にコストが下がった。さらに再エネによる電力を使って水素やアンモニアをつくり、長期間貯める技術も研究や実証が進んでいる。