生き残りをかけたANA「400人出向」 左遷でなく“将来有望”のチャンス?
会社員にとって「出向」は、左遷と受け止められていました。 その“左遷”といわれてきたものを、「会社の生き残りをかけて大規模に行う」と発表したのが、ANAホールディングスです。報道によれば、2022年度までにグループ全体の社員数を約3500人削減する予定で、採用中止や定年退職による自然減に加え、400人以上の社員をグループ外の企業に出向させるといいます。 【航空業界は新型コロナの打撃が大きい。ANAはコスト削減策を打ち出す】 すでにその傘下の全日本空輸(ANA)が、従業員の年収を約3割減にするなど、大胆なコスト削減に踏み切ることが判明していましたので、「ANAショック」と呼ぶ人や、「社員たちのプライドが持たないんじゃないか」などと、世間ではネガティブに受け止められているようです。 でも、「出向」は決して悪くない。というか、これぞ「現在窮乏将来有望」(言葉の真意は追って説明)ではないか、と。向き合い方次第では「栄転」にさえできてしまう。「他社出向」は、アフターコロナでの企業の成長と個人の成長への布石になるだけではなく、「新しい職務保障・雇用の流動化」になると期待できます。 というわけで、今回は「他社出向」について、あれこれ考えます。
400人以上出向、大型機売却……コスト削減策の内容とは
まずは、10月中旬に明らかになった「ANAショック=コスト削減策」の概要からおさらいしておきましょう。 ・約1万5000人いる従業員の給与の引き下げ ・冬季一時金はゼロ(冬季は例年月例賃金の2カ月分)、年収は約3割減に ・1992年から設けている希望退職制度の退職金を増やし、希望退職を新たに募集(詳細は労組と交渉するがパイロットは対象外) ・4月から減額している役員報酬のカット幅を11月から拡大 ・キャリアアップに向けた活動に使う無給の休業制度を最大2年設ける ・4月から実施している従業員の一時帰休は継続 また、すでに7月に発表されている通り、2021年度入社の採用活動は中止となるが(すでに内定を出した学生への変更はなし)、パイロットなどの運航乗務職および障がい者を対象とした採用活動は継続するとされています。 その後、10月末にANAホールディングスが「コストを4000億円削減」として、 ・大型機などを中心に30機を売却 ・400人以上の社員を他社に出向 ・新LCCで東南アジアなど中距離国際線に参入 などを発表しました。 ここで各メディアが衝撃的な伝え方をしたのが、「400人以上の社員の他社出向」だったわけです。