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ホンダCBR1000RR-Rエンジンマニアック解説#2:セミカムギヤトレインの狙い

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数えきれないほどの開発経験を持つプロですら引きつけられる。それほど’20ホンダCBR1000RR-Rのエンジン設計は突き抜けているのだという。史上最強の自然吸気インラインフォーとして歴史を刻んだRR-Rは、性能を追求し続けてきた直4の最後の金字塔となるかもしれない。本ページでは軽量化しつつ高回転化を図る「セミカムギアトレイン」について解説する。 【マニアック解説:エンジニ屋】数多くのエンジン設計に携わってきたベテラン設計者。とりわけ高出力エンジンを愛し、その方程式を熟知するだけに、RR‐Rへの驚きを隠さない。

ホンダ式とBMW式は狙いが微妙に異なる?

軽量化しつつ高回転化を図る技術として、ホンダがPRしているのがセミカムギヤトレインです。RR-Rのこの構造は珍しいもので、従来セミカムギヤトレインというと、ライバルのBMWS1000RRのような構造のものを指しています。 こちらはカムシャフトに取り付けられたスプロケットを小径化してエンジン高を抑えたり、カムシャフトの回転変動で生じる周期的な力(周期力)をカムチェーンに伝えないようにし、チェーンの挙動を穏やかにするなどが目的です。チェーンが暴れなければテンショナーで強く押さずに済み、メカロス低減につながる場合もあります。

――― 【”フル”カムギヤは量産車には不向き?】超高回転エンジンで問題となるチェーン挙動の乱れを解決するのが、カム駆動をギヤ化するカムギヤトレイン。’80~’90年代のホンダ車で多用されたが、近年の採用例はRC213V-S程度。重量がかさんでコストも高く、ノイズも大きいなど、実は量産向きではないレース技術でもある。量産経験を持つホンダはそれをよく知っているはずだ。※図はRC213V-S ―――

ところがRR-R方式では、カムシャフトからチェーンに伝わる周期力は通常のカム駆動方式と何も変わりません。もちろんカムチェーンは短くなっているので、それだけで振動しにくいかもしれませんが、BMW式ほどの効果があるのか? という疑問も生じます。 しかし、実はカムチェーンに加わる周期力にはもうひとつ非常に大きな力があるのです。それはクランクシャフトの振れによるもので、RR-Rのセミカムギヤトレインはそれを見事にキャンセルしています。私はこっちが本当の目的ではないかと思うのです。 超高回転で回転するクランクシャフトは、ピストンの慣性力や燃焼の力により、常に上下に激しく変形しています。特にシャフトの端の方は軸受けからも距離が遠く、変形が結構大きいのです。その動きの激しい部分にカムチェーンのドライブギヤを配置すると(通常はそこに配置するしかない)、クランクの変形でカムチェーンが強く加振されてしまい、カムチェーンのメカ音やテンショナーの摩耗、アジャスターの破損やチェーンの折損といったトラブルが発生しやすくなるのです。 RR-Rのカムチェーンは直接クランクシャフトには掛かっておらず、一度アイドルギヤを介していますから、クランクシャフトの振動をほぼ受けることがありません。クランクに取り付けられたドライブギヤ(ホンダ呼称はタイミングギヤ)は振れますが、その上のドリブンギヤ(同カムアイドルギヤ)とはチェーンのようにつながっていませんから、ここでクランクシャフトの振動はほぼ断ち切れるのです。

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