ダルビッシュの復帰、本格復調への道のり データが語るもの
実は、そこにも個人差があるよう。 あのウェイウンライトも、故障する前の2シーズンで39勝をマークするなど球界を代表する投手になっていたが、2012年の復帰初年度は14勝13敗、防御率3.94と、彼にしては、平凡な成績に終っている。そこだけを切り取れば、13ヶ月での復帰は早すぎたのは?となるわけだが、2013年は19勝9敗、昨年は20勝9敗をマークし、今年もサイ・ヤング賞の最右翼だ。 ティム・ハドソンも、2009年の後半に復帰。その年は7試合に先発し、2勝1敗、防御率3.61とよくも悪くもなかったが、2010年は17勝9敗で、オールスターにも選ばれている。 そんな一方で、復帰直後から、復帰前同様のピッチングが出来る投手もいる。2007年8月3日に手術を受けたジョンソンが11ヶ月で復帰したことは既に触れたが、2013年7月10日に復帰すると、その年は、7勝1敗、防御率、3.61といきなりの活躍だった。12ヶ月で復帰したストラスバーグも、9月に復帰すると、その年は5試合に先発し、1勝1敗だったものの、防御率は1.50と打たれなかった。 ただ、ジョンソンの場合、いい時期が長くは続かず2010年を最後に低迷。昨年4月24日に2度目のトミー・ジョン手術を受けた。早期復帰との関連は分からないが、ないとも否定できないところがある。 なお、じっくり時間をかけて復帰をしても、元に戻らない例もある。レンジャーズのネフタリ・フェリスは2013年9月に復帰し、2014年は完全復活が予想されたものの、オープン戦で散々。前半をマイナーで過ごすことになった。今年は開幕からクローザーが予定されているものの、かつて100マイル(約160キロ)を誇った真っすぐの球速は、92マイル(147キロ)程度にまで落ち、戻らないままだ。 ちなみに、トミー・ジョン手術をすると、球速が増すとも言われているが、調べた限りでは、むしろ落とす投手の方が多かった。調べたのは故障前と復帰直後で、復帰してから1年後ならまた数字が違うのかもしれないが、ストラスバーグなど、デビューしたことは4シームファストボールの平均が97(155キロ)~98マイル(157キロ)だったが、故障から復帰して3年目となる昨年の平均球速は95(152キロ)~96マイル(154キロ)だった。スピードが増したとしても、わずかである。 さて、ざっと調べた中では、マイナーにさえ復帰できなかった投手もいた。 2006年、100マイル(160キロ)以上の球を233球も投げ、球界平均最速を誇ったものの、その後故障が続き、2012年3月29日にトミー・ジョン手術を受けたジョエル・ズマヤは、昨年2月、復帰を断念した。もともと故障がちで、単純に靭帯が引退の原因ではないようだが、いずれにしても2年かけたが、マウンドに立つことはなかった。 こうして様々なケースを調べると、むしろ藤川は順調な方ではないか。もちろん彼は、慎重に慎重を期し、ようやくここまで来た。 では、ダルビッシュはどういう道をたどるのか。最近、ギプスが変わり、リハビリは指と指をタッチすることから、「開いて、握って」を繰り返しているそうだ。順調に行けば、4~5ヶ月後にキャッチボールが始まる。 (文責・丹羽政善/米国在住ライター)