<メディアは生活保護をどう報じてきたか>「利用者」と「公務員」“悪”の対象に揺れた20年間
NHKのクローズアップ現代で、生活保護の特集が放映された。物価高騰などを背景に申請数は4年連続増加、利用する世帯は165万を超える。先行きが見えにくい社会で、再び生活保護に注目が集まっている。 【図表】「生活保護」の新聞報道件数の変遷 「福祉事務所バッシング」と「利用者バッシング」の両極を揺れ動くメディアで、NHKは何を描こうとしたのか。メディアは生活保護をどう報じてきたのか、過去20年の歴史を振り返ってみよう。
NHK「『助けてと言ったのに…』生活保護でいま何が?」
2024年9月18日に放映されたNHKのクローズアップ現代では、「『助けてと言ったのに…』生活保護でいま何が?」というタイトルで特集が組まれた。番組では、制度を運用する自治体で不適切な対応が相次いでいること、理想と現実の狭間で“運用の限界”を迎えていることが報じられた(NHKクローズアップ現代、2024年9月18日)。 生活保護は06年から13年の数年間にメディアで繰り返し取り上げられた。東京都立大学の堀江孝司教授は、新聞各社の報道を「生活保護」をキーワードとして分析し、その傾向を明らかにした。分析によると、生活保護に関する報道は、09年に1回目の山を迎え、その後いったん沈静化したあと、13年に2回目の山を迎えている(堀江孝司「新聞報道に見る生活保護への関心――財政問題化と政治問題化」,図1)。 実は、第1と第2の山では、報道は正反対のスタンスになっている。結論だけ先取りをすれば、第1の山は「貧困の再発見」、第2の山はその反動としての「生活保護バッシング」というキーワードで説明することができる。
なお、報道件数は13年を契機に減少に転じ、以降は相対的に低調な時代が続いた。 しかし、筆者は、ここ2年ほどの間に、再び生活保護が報じられる機会が増えてきたと感じている。なぜ、このタイミングで報道件数が増えているのか。これまでの報道とは何らかの違いがあるのだろうか。この点についても、掘り下げて考えてみたい。