「高年齢雇用継続給付」が法改正で大幅減 3つの給付要件と計算法を解説
2020年度の通常国会で「高年齢雇用継続給付」の縮小が可決されました。 この法改正により2025年4月から、給付金の支給率上限が段階的に引き下げられることになります。 給付金の存在は、定年を迎え公的年金の受給が開始されるまでの間、企業に再雇用されて就労する方にとって重要な収入の補填措置となっていました。 これが今後縮小されていくことになるので、今60歳未満の方にとって働き方を考えていく上で大変重要な法改正です。 そこで今回は、現行制度の仕組み、実際にいくらもらえるのかをみつつ、法改正の影響を考えてみたいと思います。
高年齢雇用継続給付とは
雇用保険では、60歳以降に定年再雇用などによって、労働条件が変更されたことで給与が減少した場合に、これを補う「高年齢者雇用継続給付」という制度を設けています。 この制度では、一定の要件に該当する60以上65歳未満の雇用保険被保険者が、60歳に到達した時点の賃金と現在の賃金を比較して75%未満まで低下した状態で就労しているときに給付金が支給されます。 給付金を受け取るにはいくつかの要件があり、すべてを満たさないと給付が受けられません。 では、どのような要件があるのでしょうか。 その内容と押さえておくポイントをみてみましょう。 ■給付金を受給するための3つの要件 【要件1】 60歳以上65歳未満の雇用被保険者であること 【要件2】 雇用保険に継続して5年以上加入していること 【要件3】 現在の賃金が60歳以前の75%未満であること
受給するために押さえておくポイントは多い
【要件1】のポイントは、60歳以降もお勤め先で雇用保険に加入していることです。 定年後に同一のお勤め先で就労はしているが、ご本人の自由な働き方をしたいといったニーズから、雇用ではなく業務委託契約などの形態でお仕事を続けるようなケースでは、収入が低下していても給付金を受給できません。 【要件2】のポイントは、雇用保険に継続加入していることです。 原則としては、60歳の前後を通じてお勤め先で雇用保険に加入していることです。 途中で転職をしている場合でも、失業保険を受給していなければその分の期間を通算できます。 注意が必要なのは、55歳以降に転職した際に失業保険を受給したか、それまで公務員として共済に加入しており雇用保険に加入したことがない場合です。 いずれについても、新たに雇用保険に加入して5年以上経過すれば【要件2】をクリアしますので、その時点から給付金を受給できる可能性が生じます。 【要件3】のポイントは、60歳到達前にお勤め先の就業規則の定めによって、賃金などの労働条件が変更された場合には受給できなくなる可能性があることです。 例えば、ある企業では58歳に到達すると賃金改定され、60歳到達時に賃金が既に低下ている場合などは、この状態を基準にして賃金がさらに75%未満に低下しない限り給付金を受給できません。