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アルコールによる消毒・除菌 過敏症の方に配慮を

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週刊金曜日

 新型コロナウイルス感染防止のため、いたるところで消毒・除菌が行なわれているが、それで体調を悪化させる人もいる。  埼玉県のAさんは重度のアルコール過敏(不耐)だ。3月18日の午後4時ごろ、かかりつけの病院へ行ったところ、院内の清掃・消毒にかち合った。強いアルコール臭が急に立ち込め、それを吸い込んでフラッとよろけた。  持病の治療を急いで済ませ、駐車場の車に避難したが、おなかの調子が悪くなり、寒気がする。温かい飲み物を飲み、1時間ほど休んで運転を始めたが、感覚が正常でなく、あちこち道を迷い、普段は20分ほどで帰宅できるのに1時間半もかかった。その後、しばらく寝込んだ。  以来、通院を控えている。近くのスーパーもアルコール臭が強くなって、行けなくなった。  アルコール過敏の人は、アルコール消毒液に触れたり、揮発した成分を吸い込んだりすると、頭痛・動悸・吐き気などの症状が出る。またアルコールアレルギーの人は皮膚炎やじんましんになる可能性があり、場合によっては呼吸困難に陥ることもある。 〈電車内で除菌ウエットシートを使われただけで、ウッとなる。商業施設の入口に立つスタッフが持つアルコール消毒スプレーは最悪の凶器だ。そんな重度のアルコールアレルギーの人間がいることを知ってほしい〉という趣旨の訴えがネットに流れている。  消毒液や除菌商品にはアルコールのほか、殺菌力の強い二酸化塩素や次亜塩素酸などが使われており、これを化学物質過敏症(Chemical Sensitivity=CS)の人や化学物質に敏感な人が吸い込むと、体調が悪化する。  高知県のCS患者Bさんは3月11日午後、病院の待合コーナーで診察を待っていた。突然、2、3人の清掃スタッフが椅子の消毒を始めた。気づいてすぐにその場を離れたが間に合わず、消毒液の成分を吸い込んでしまった。のどに焼けるような強い痛みを感じ、力が抜けた。  診察を短時間で済ませて何とか帰宅したが、のどと気道の痛み・咳・我慢できない渇き・皮膚の乾燥・強い疲労感など全身にさまざまな症状が出て、家事ができない。そんな日が1カ月余り経っても続いている。  院内を消毒するなら、事前に通知するか、直前に「これから消毒を始めます」と案内するかしてほしかったとBさんは嘆く。 【手洗いすれば消毒必要なし】  CSに詳しい渡辺一彦・渡辺一彦小児科医院院長(札幌市)によると、過度に消毒液や除菌消臭剤が使用された環境は、CS患者の症状を悪化させ、まだ症状のない人を発症させる可能性がある。 「化学物質で体調が悪化する病があることを社会として認識し、そのことに配慮したうえで感染予防を進めてほしい。過剰な消毒や意味のない消毒はやめるべきだ」と渡辺医師は言っている。  たとえば厚生労働省の啓発資料には「手洗いを丁寧に行うことで、十分にウイルスを除去できます。さらにアルコール消毒液を使用する必要はありません」と書かれているが、二つともする人がいる。  また「ファブリーズW除菌」などを全身に大量に吹きかける人が増えているが、この商品についてメーカーのP&Gジャパンは「新型コロナウイルスの予防を目的とした製品ではなく、またその効果は確認できておりません」とサイトに記している。  過剰な消毒は弊害も生む。  各地の皮膚科クリニックで3月以降、例年なら減る手荒れの患者が増えている。アルコール消毒や手洗いのやりすぎが原因だ。特に幼児は肌のバリア機能が弱いため、アルコールで肌が乾燥し、手荒れやひび割れが起きやすい。  ウイルス対策のうがいは口腔内の乾燥を防ぐことなどが目的なので、水で十分だ。イソジンなど殺菌効果の高いヨード系のうがい薬を多用すると、口腔内の善玉の常在菌まで殺し免疫力を低下させると、内科医の秋津壽男・秋津医院院長(東京都品川区)は注意を促している。 (岡田幹治・ジャーナリスト、2020年4月24日号)

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