インドAI人材が日本へ、中小企業に関心-円安でも企業文化に魅力
(ブルームバーグ): インド工科大学(IIT)で人工知能(AI)を専攻したサビル・タルバラさん(24)は昨年春、愛知県郊外のバルブ製造メーカー「高砂電気工業」に就職した。グーグルやオープンAIなど米国の大手IT企業も選択肢にあったが、家族の反対を押し切って日本企業を選んだ。
世界のトップ企業がAI人材の獲得競争を展開するインドで、タルバラさんのように日本の中小企業に関心を示す学生が増えている。インド北部のIITルールキー校では今年海外で就職した52人のうち、35人が日本を選択した。この数は昨年の3倍に上る。 円安が進行する中でも、教育システムや多様な経験を積める企業文化がインドの若者を引き付けるようだ。
タルバラさんは、日本の機械や電気製品は高品質を誇り、AIを使って品質管理にかかる時間や製造工程を改善できれば産業をさらなる高みに引き上げることができると説明。「最高品質と名高い日本の製造業に自分が直接貢献」することができれば、夢に向かって成長できると話す。
経済産業省は、2025年には8万8000人のAI人材が不足すると試算。製造業やサービス業など労働者への依存度の高い産業で業務の効率化や生産性向上の遅れが見込まれ、中小企業にとっては存続に関わる可能性がある。インドのAI人材市場の変化は、労働力不足が深刻化する日本企業にとって、人材獲得の好機となっている。
出入国在留管理庁によると、AI人材を含めた「高度専門職」で日本に在留する外国人のうち、インド国籍を持つ人は23年12月時点で1272人。5年間で2.4倍に増加したが、国籍・地域別の割合は5.3%にとどまっている。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が7月12日、現地でインド人学生向けに行った日本での就業機会紹介イベントには6900人が登録した。担当したスワスティック・クルカルニ氏は、職場の上司や先輩が仕事を通じて指導をする企業文化がインドの若者の家族観に合っており、「中小企業の人気が高い」と述べた。