不登校、県内2万93人 埼玉県教委の調査 いじめも最多3万6千件 最も多いのは「冷やかしやからかい、悪口」
埼玉県教育委員会は21日、2023年度の県公立学校における問題行動・不登校等調査の結果を公表した。10月に文部科学省が発表した全国調査結果から県公立校の結果をまとめたもので、県公立小中学校・高校で年度間で30日以上登校しなかった不登校児童生徒は、2万93人と過去最多を更新。いじめの認知件数も3万6031件で、うち重大事態に認定されたのは85件と、県のいじめ認知件数は10年連続で増加した。 小中学校時代の約5年間、不登校を経験 高校は埼玉県内初の三部制高校「戸田翔陽高校」へ 現在は文部科学省官僚となった藤井さん
県教育局によると、調査は小学校796校(35万2816人)▽中学校416校(17万5530人)▽高校163校(10万9549人)▽特別支援学校54校(8726人)を対象に実施した。 不登校の小学生は5958人(前年度比35・6%増)中学生は1万833人(同11・5%増)、高校生は3302人(同17・8%増)となり、全国と同様の増加傾向だった。学校が把握した不登校児童生徒についての事実は、小中高校いずれも「学校生活に対してやる気が出ない」が1位を占め、2位に「生活リズムの不調」が続いた。 いじめの認知件数は小学校3万162件(前年度2万9643件)、中学校5677件(同5210件)、高校181件(同131件)、特別支援学校11件(同9件)と県公立学校全体で増加。千人当たりのいじめ認知件数も55・7件(同53・5件)と増えた。 いじめの内容は、小中高校・特別支援学校いずれも「冷やかしやからかい、悪口」が最も多く、小中学校と特支では「軽くぶつかられた、たたかれた」、高校では「電子機器を使用した誹謗(ひぼう)中傷」が続いた。
小中高校における自殺が疑われるのは小学生1人、中学生5人、高校生4人の計10人だった。 いじめや不登校が増加した要因として、県教委はコロナ禍以後、学校活動が通常に戻る中での生活環境の変化などを挙げ、生徒同士の交流が増えたことに伴ういじめ認知の増加や、新たな交友関係の構築など学校生活に意欲が湧きにくい状況を指摘した。いじめについては、いじめ防止対策推進法にのっとった積極的な認知があったとした。 県教育局生徒指導課は今後、スクールカウンセラーと連携した相談体制や学習支援の充実、ガイドラインに基づいた早期対応の徹底を図るとし、「生徒児童がお互いを理解し、尊重し合える風土づくりに努める」としている。 ■県、オンライン活用し支援 不登校の児童生徒の増加を受けて、県は不登校の未然防止、児童生徒の状況に応じた多様な教育機会の確保などの取り組みを進めている。 県立与野高校(さいたま市中央区)では、今年6月から端末を1人1台活用した「心の健康観察」を実施。生徒が毎朝、体や心の状態をアプリで報告し教員が早期に不調を察知できるよう、相談体制の充実を図っている。3月には児童生徒支援ガイドブックを作成・配布。教職員やスクールカウンセラーらの研修で活用し、児童生徒に関わる者の資質向上に取り組んでいる。
県全体では本年度からメタバース(仮想空間)などオンラインを活用した支援を試行的に実施。不登校を経験した高校生との交流会やオンライン社会科見学のほか、今月から深谷、富士見、吉川市などと連携し、朝礼をメタバース上で行うなど、多様な教育機会の確保のために研究を進めている。 22日に行われた定例会見で日吉亨県教育長は「児童生徒の学びの保障をするとともに、社会的な自立の支援に取り組んでいく」と話した。