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コロナ下のがん治療に不安… 専門家がQ&A形式で解説

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NIKKEI STYLE

新型コロナウイルス感染症の流行が続く中、がん患者が治療に不安を感じたり、がん検診を控えたりする動きが出ている。このほど、専門学会は、患者向けにQ&A集の最新版を公表した。必要以上に恐れずに、自己判断しないよう呼びかけている。主治医とよく話し、迷ったら家族や周囲の人の支援を得ながら対応していくことが重要となりそうだ。 Q「治療が変更されて(予定より遅れて)、必要な治療を受けられているか、がんが進行しないか心配です」 A「主治医はがんの進行状況や治療効果、地域の流行状況などから総合的に判断して治療方針を提示しています。心配なことや質問があれば、その内容を書き留めておき、主治医に忘れずに質問してください」――。 日本癌治療学会、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会が7月に作ったがん患者向けのがん診療と新型コロナに関するQ&A集の一部だ。 がん患者が抱きやすい疑問を中心に、がんの種類や治療法別の重症化リスク、緩和ケアの継続などを最新の海外の研究を踏まえて具体的に解説している。 新型コロナが、がん患者の心理や治療に与える影響は大きい。一般社団法人のピアリングの4月の女性患者対象のアンケート調査では、約4分の1が治療の延期などの影響を受けたとした。「自分や家族が感染する不安を感じる」のは97%で、通院を延期した人も多かった。がん診療を制限したり、手術件数を減らしたりした医療機関が相次いだのも原因とみられる。 一方で、世界の研究者はがん治療と新型コロナの関係について分析し、知見が集まってきた。 感染リスクについて、北里大学病院の佐々木治一郎・集学的がん診療センター長は「一般のがん患者が感染するリスクは健康な人と同程度」と説明する。 中国や英国などの調査からがん患者は、糖尿病患者などと同様に、新型コロナに感染すると重症になりやすいことも分かってきた。 ただ、治療法などによって重症化しやすさは違う。欧州臨床腫瘍学会のガイドラインによると、化学療法や体の広範囲の放射線治療、白血病などの患者などでリスクがある。Q&A集作成を進めた東京歯科大学の寺嶋毅教授は「がんの種類や治療法によって異なる」と説明する。 高齢者や持病を持つ人なども注意深い経過観察を要するという。北里大病院の佐々木センター長は「患者ごとに状況は違う。自己判断せず、主治医と話し合ってほしい」と指摘する。 もう一つ、がん検診を受ける人も減っている。日本対がん協会によると、緊急事態宣言が出た4月の受診者数は2019年の約15%、5月には同8%。多くの検診機関が検診を中断していた影響が大きい。 国立がん研究センター中央病院検診センターは、中断していた検診を6月から段階的に再開した。人数などを制限し、3密を避けるなどの感染対策をとる。松田尚久・検診センター長は「再び緊急事態宣言が発令された場合も休止しない体制を目指す」と話す。 検診率の低下は、がん治療の遅れや死亡率の上昇につながりかねない。日本対がん協会によると、同協会支部の検診の受診者が今年度3割程度減るとすると、年間のがん発見数が4千人近く減る可能性がある。 がん検診は一部の早期がんの発見に有効だ。がんが発見されず、精密検査や治療に進む患者の減少は続いている。同病院の島田和明病院長は「早期がんの発見と治療が遅れることを懸念している」と話す。 英国でも、がん治療の専門外来への患者の紹介が最大で約8割減ったという。同国の研究チームは7月に、同国で診断後5年以内の死亡者数が新型コロナ流行前に比べて、乳がんでは8~10%、大腸がんでは15~17%増えるとの予測をまとめた。日本でも同様の影響が考えられるという。東京歯科大の寺嶋教授は「心配しすぎず前向きにがん検診や治療などに臨んでほしい」と呼びかけている。 ◇  ◇  ◇

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