子どもにとってナイフのように危険……IT最先端のシリコンバレーで働く親が、わが子にスマホを与えないワケ
■高校生になったら抑えつけてはいけない ただ、親が精いっぱいの努力を傾け、子どもがある程度まで自己コントロール能力を備えても、子ども自身が固い意志を持たない限り、スマホなしでは生きていけない。親が強制して物理的に持たせまいと思っても、そこにはおのずと限界がある。 子どもが高校生になって、どうしてもスマホを持ちたいと言うのなら、もう買ってあげたほうがいい。子どもが自分からスマホは持たないという選択をするのならともかく、高校生にもなった子どもを高圧的に抑えつけることは、親子の関係を悪化させるだけだ。子どもを一方的に抑圧してスマホから遠ざけても、得るものより失うもののほうが多くなるだろう。 ■小・中学生のあいだにすべきこと 親は子どもが小・中学生のあいだに、自らの道を選択できるような哲学と価値観を持てるよう導いてあげることが大切だ。 先に紹介した「8年生まで待とう」キャンペーンに参加したある母親は、娘への手紙に「スマホを渡した瞬間、あなたを失うかもしれないということが一番怖い」と書いた。親が子に与えられる一番のプレゼントは、幼い頃に親と一緒に過ごした温かい思い出だ。このように、子どもに対してどう思っているのか、親の気持ちを伝えるのもよい方法だ。 ある母親は中学卒業を前にした息子を連れて、アイビー・リーグ(米国北東部にある名門8大学)のツアーに行ってきたそうだ。大学のキャンパスを自分の目で見て夢を膨らませた息子は、自らスマホを持たない決断をしたという。よく話し合おうとする親の不断の努力と真心が、子どもを自ら決断できるように導いたのだ。 スマホが日常化された世界で、人とは違った方法で育ち大変だったであろう末っ子のヘソンは、ハーバード大学に願書を送るとき、スマホなしで過ごした頃の話をエッセイに書いて提出した。のちに受け取った合格通知書には、エッセイで読んだスマホの話が深く心に残ったという、入学所長直筆のお祝いのカードが入っていた。 ---------- シム・ファルギョン 主婦 韓国でキリスト教教育で修士学位を取得した後、同じ大学で神学を学んでいた夫と結婚。夫の留学を機にアメリカに移住。アジア人移民は社会的にはマイノリティーであり、さらに牧師の家庭だったため経済的にも苦しかったが、入試コンサルティングはもちろん、塾にも行かせず、一般の公立学校に通った3人の娘全員をハーバード大学に入学させた。三姉妹がハーバードに合格したあとも「私はごく平凡な人間で、特別なところは一つもない。すべて子どもたちが成し遂げたことだ」と述べ、多くを語らなかったが、『3人の娘をハーバードに合格させた 子どもが自ら学びだす育て方』(かんき出版)で初めてそのストーリーを惜しみなく公開。子どもの教育や育て方に関する講演を活発に行いながら、多くの親の悩みを聞いて共感し、読者一人ひとりと目を合わせるような温かいメッセージを伝えようとしている。 ----------
主婦 シム・ファルギョン