マイナ保険証“1415人の医師・歯科医師”が国を訴えた「行政訴訟」に東京地裁が“棄却判決”…12月以降、国が“抱える”ことになった「重大問題」とは
「数」の問題ではない
厚生労働省の調査によれば、10月27日時点で保険医療機関のうち、マイナ保険証でのオンライン資格確認に使用する顔認証付きカードリーダーの導入率は全体で91.9%となっている。この数字は今後も増えていくことが想定される。そんななかで、本件訴訟を提起する意義はどこにあるのか。 原告弁護団の二関辰郎(にのせき たつお)弁護士は、憲法の役割である「基本的人権の保障(特に、侵害されやすい少数者の人権の保護)」の観点から、以下のように説明した。 二関弁護士:「本件訴訟で主張しているのは『法律の委任がないのに省令で義務付けることはおかしい』という憲法・法律上の問題であり、それは、現実にシステムを導入している医療機関が何%かということとは区別して考えるべきだ。 その理屈を、最後まできちんと議論したいというのが我々の立場だ」 また、須田医師も次のような指摘を行った。 須田医師:「オンライン資格確認の義務化に伴って廃業した医療機関の数を確認中だ。私たちの肌感覚として、かなりの人が明らかに現実に苦しめられている。 特に、過疎地の医療機関ほど苦しく、過疎地に住む人々の医療が切り捨てられるおそれもある。 私たちは、少しでも、1人でも廃業する人を減らすべきだと考えている。オンライン資格確認のシステムを導入していない医療機関の割合が少なくなれば問題がないということではない」
新規発行停止後は「資格確認書の利用を」
本件訴訟の対象となったのはあくまでも、「国が法律ではない“省令”で医療機関に対しオンライン資格確認を課すこと」の違憲性・違法性であり、患者・一般国民との関係は争点となっていない(訴訟制度上、争点にできない)。 一般国民の立場からの問題として、必要な医療サービスを速やかに受けられるという「医療アクセス権」侵害の問題が指摘されている(憲法13条参照)。特に、在宅介護を受ける人など、マイナンバーカードの申請や更新(カード自体と電子証明書)、マイナ保険証への紐づけ、顔認証付きカードリーダー等でのオンライン資格確認を行うことがいずれも困難な人にとっては切実な問題といえる。 原告事務局長の佐藤一樹医師は、次のように訴えた。 佐藤医師:「私たちはデジタル化に反対していないし、医療の現場が混乱することを望んでいない。 あくまでも、現行の健康保険証の新規発行が停止される12月2日以降も、すべての人がこれまでと変わらず滞りなく医療サービスを受けられることが最重要だ。 強調したいのは、マイナンバーカードを作るか否かはあくまで任意であり、マイナ保険証を持っていなくても『資格確認書』があればこれまでと同じく医療サービスを受けられることだ。 私たちは、すべての国民が必要な医療サービスを滞りなく受けられるよう、このことのPRに努めていく」