マイナ保険証“1415人の医師・歯科医師”が国を訴えた「行政訴訟」に東京地裁が“棄却判決”…12月以降、国が“抱える”ことになった「重大問題」とは
判決理由は「国側の主張をなぞっただけ」
今回の一審判決の重要な点は、以下の通りである。 まず、「法律による下位規範(政令・省令)への委任」があったかについては、健康保険法70条1項が「資格確認の方法」のルール制定について「療養担当規則」(省令)に「委任」しているとする。 その理由として、健康保険法70条1項が、医療サービス(療養の給付)そのものに限らず、それにあたって「遵守することが必要な事項の定めを厚生労働省令(療養担当規則)に委任していると解するのが自然である」と説明している。 また、その「必要な事項」の判断については「必ずしも国会での審議になじむものとはいえず、(中略)厚生労働大臣の専門技術的な裁量に一定程度委ねている」とした。 さらに、医療機関でのオンライン資格確認に対応するための体制整備に伴う経済的負担が生じる点については、「療養の給付そのものの内容や態様に係る制限ではなく、それが保険医療機関等に対して事業継続を困難にするようなものに相当すると直ちにはいうことができないから、(中略)職業活動の自由の制約の程度が大きいということはできない」とする。 以上の本判決の論旨を概観すると、立法による政令・省令への委任を緩やかに認め、また、内閣をはじめ行政部門の「裁量」を広く認める傾向がみてとれる。 この点につき、原告弁護団長の喜田村洋一弁護士は、「国側の主張をそのまま記載しただけの『お手軽判決』だ」と批判した。 喜田村弁護士:「実際には、私たちは詳細な反論を行っているが、判決理由では、なぜそれらの反論が通らないかについて説明がなされてない。 原告が控訴する決意を固めているので、私ども弁護団も、控訴審でさらに論理と事実を積み重ねていくつもりだ」 なお、補足すると、原告は、健康保険法70条1項の「療養の給付」の内容、法が定める資格確認のあり方(同法63条3項参照)、健康保険法全体の趣旨・目的(同法1条参照)、その他の様々な論点につき、法令全体の定め方との整合性、国会での審議過程等にも言及しつつ、詳細な法律論を展開していた。訴状・準備書面等は東京保険医協会HPの特設サイトで公開されている。