定年退職後、年金だけでは夫婦2人の生活が苦しく、子ども2人に「毎月5万円ずつ」仕送りしてもらっています。1年で110万円を超えると贈与税がかかるのでしょうか?
定年退職後、再就職や再雇用などがなければ、生活費は基本的に年金収入と貯金のみが頼りになります。しかし、貯金があまりなく年金が少ないという理由で、子どもから仕送りをしてもらうケースもあるでしょう。 子どもから仕送りを受け取るときは、状況によっては贈与税の課税対象になる場合があるため、条件を知っておくことが大切です。今回は、老後に必要な生活費や仕送りが課税対象になるケースなどについてご紹介します。 ▼子ども名義の口座に「月3万円」ずつ入金してるけど、将来口座を渡すときに「贈与税」はかかるの? 非課税にすることは可能?
仕送りは使用用途と金額によっては課税対象になるケースも
通常、財産を受け取ると1年間で受け取った金額の合計が110万円を超えていれば贈与税が課されます。 しかし、仕送りを生活費のために使用していれば課税はされないと考えられます。国税庁によると、「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」は贈与税がかからない財産とされているためです。病気やけがの治療費も生活費に含まれます。 ただし、非課税となるのは生活費として「必要な都度直接」仕送りが使われたときです。生活費として送られても、貯金に回すと課税対象になる可能性があります。
仕送り10万円を受け取っていたら課税されるのはいくら?
生活に必要な分は贈与税の課税対象にならないため、税額を計算するためにはまず受け取ったお金から生活費を差し引いた金額を求めます。生活費以外の仕送りと同じ年に受けた贈与を合算した金額から基礎控除額である110万円を引いた額が課税対象です。 ■老後に必要な平均生活費 総務省統計局が公表している「家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、65歳以上かつ夫婦のみの無職世帯の食費や水道光熱費といった平均消費支出は、月額25万959円でした。さらに、税金や保険料などの非消費支出は月額3万1538円なので、月額の支出は平均28万2497円です。 日本年金機構によると、令和5年度における夫婦2人が受け取る標準的な年金額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を含めて合計22万4482円でした。月額の平均支出と比較すると、5万8015円不足する計算です。 ■支出・仕送り金額・ほかの贈与を基に贈与税を計算する 先述した支出の不足金を補うために、2人の子どもから毎月5万円ずつ送金してもらったとしましょう。計10万円のうち、不足している5万8015円を仕送りから補い、残額4万1985円を貯金したとすると、仕送りのうち年間50万3820円が贈与の対象になります。 年間110万円を超えていると贈与税の課税対象なので、仕送り以外に59万6180円を超える贈与があれば贈与税の納付が必要です。今回は、以下の条件で贈与税の金額を計算しましょう。 ・贈与対象となる仕送りが年50万3820円 ・同年に仕送り以外の贈与が100万円 条件を基にすると、課税対象になる贈与額は合計150万3820円です。そのため、基礎控除の110万円を引いた40万3820円に対して課税されます。国税庁によれば、今回のケースだと税率は10%なので、贈与税額は4万382円です。