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アートを突き動かす“ロック魂”ー本村ひろみの時代のアイコン(30) 知花幸太蠟(ジュエリーデザイナー)

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琉球新報

知花さんは2018年に自身のブランド「スーパーロケンロージュエリー」を立ち上げた(通称スパロケ)。 シンボルマークは無機質な正方形と有機質なイメージの向かい合うスカルのシルエット。物を制作する上で、違う要素(静と動のような相反するもの)を取り入れるのがブランドのコンセプトだそうだ。 「中学生の頃ヘビメタにハマってマリリン・マンソンの影響もあってスカルというモチーフは好きなんです」と、はにかんだ笑顔で答えてくれた。どうやらその頃芽生えたロック魂が彼のアートを突き動かしているらしい。 “モノをつくるのが好き” 風が強い日、工房があるご自宅におじゃました。 大きく成長したクロキが防風林のように庭を囲み、月桃の白い花が柔らかい影を落としている。ひんぷんの上には趣の違うシーサーが二体、並んで迎えてくれた。ご自宅には紅型の工房もあった。母親の知花千賀子さんは紅型作家で、現在も制作や指導に取り組んでいる。知花さんの弟・幸修(ゆきなが)さんも紅型のアーティストとして活動しているそうだ。室内には陶芸が趣味だった父親が集めたという壺や陶器、仏頭がいたるところに飾られていた。その影響は陶器とシルバーのリングに表れている。陶器の曲線にカチっとしたシルバーで動と静を融合させ、自分なりの形を追究している。陶器のジュエリーはコンテンポラリージュエリー的なものを意識した。知花さんのモノづくりのコンセプトは“異質なものの融合(静と動)”だが、陶器のジュエリーの限定的なコンセプトは、気に入っていても割れると捨てられてしまう陶器の石の風合いを引き継ぎ、ジュエリーにして再び命を吹き込むというもの。割れた形そのままを大切にして「欠片(カケラ)」を身につけるという思いを込めている。 知花さんは制作をしている母親の姿をずっと間近で見ていたこともあり、「人がモノを作ることは当たり前に思っていた」そうだ。学校の美術の授業が得意というわけではなく、モノをつくるのが好き。そんな少年時代に音楽から多大な影響を受ける。音楽とファッションは切り離せない。ヘビメタからシルバーのアクセサリーに興味をひかれた。その中でも「スカル」は象徴的なデザインだった。 脳腫瘍の手術、リハビリを乗り越えブランド設立へ 大学は沖縄県立芸術大学へ進学し、デザインを専攻。 そこでジュエリーデザインをしようと考えていたそうだが、授業ではプロダクトデザインが主流だった。ジュエリーの作り方を学びたいと思っていた知花さんは、独学で真鍮(しんちゅう)やシルバーでの制作技術を習得した。 デザイン科で学んだ論理的な思考は、今でも作品のコンセプトを考える際に生かされている。多角的な視点と素材を扱う技術。大学卒業後は県外で宝飾関係の会社でダイヤを研磨する技術を修行し、そのブランドのデザインやウェブショップを担当。未来へ向けて輝かしい東京での生活が5年ほどたった頃、脳腫瘍が見つかった。すぐに沖縄へ戻り手術を受け、その後しばらく身体の右側にまひが続き、約1年間入院とリハビリの日々が始まった。利き手は右。制作する時に力を込めて握ったりつかんだりするのは利き手だ。ピンチ力(指でつかむ力)をつけるため庭の雑草を毎日抜いた。思う通りに指が動くように庭の木々を手入れしてリハビリした。子どもの頃にやっていた空手も3年前から道場に通い始めた。ハンディキャップ空手。少しずつ動きを取り戻し、2018年にブランドを設立した。 コロナ禍でも新しい技術に挑戦 2018年、母と弟と3人アーティストとしてルーブル美術館で開催されたカルーゼル・デュ・ルーヴルに作品を出展した。海外での評価も得て、2019年、一人百首シリーズを展開。銀と銅を混ぜ合金にしてスカル100個のペンダントトップを制作。ユーモラスでキャッチーなイメージを大切にしている「スパロケ」の商品で、100首の表情がそれぞれ異なり、一個一個和彫りで制作し、今年3月には那覇市栄町の「堤洋装」(現在は移転している)で100個並べて展示した。 多くの反響があり、コロナ禍では新しい技術に挑戦。3Dプリンターで鋳造して作品を制作した。握手する手「シェイクハンド」は、未来への夢をつないでいくという思いが込められている。バイク好きな知花さんはバイカー向けのアクセサリーも作りたいという思いから、手の形をした鍵も商品として展開。今後は立体のジュエリーに絵画の世界も取り込んでいきたいと夢を語ってくれた。 取材中、庭に向けて開け放たれたリビングから夏のにおいが入ってきた。芝生に挿した真鍮の蚊取り線香スタンド。渦巻きの線香もまるでオブジェのようだ。この商品は普天間のショップ“cork(コルク)”でジュエリーとともに販売中。 今年の夏はおしゃれにシルバーや真鍮のアクセサリーを手にしたい。 【知花幸太蠟プロフィール】 知花幸太蠟(ちばな・こうたろう) 2008年    沖縄県立芸術大学美術工芸学部デザイン専攻 卒業 2014年    シルバーアクセサリーを中心に制作を開始 2016年    沖縄工芸振興センター 工芸縫製/金細工に研修生として入所 2018年    カルーゼル・デュ・ルーヴル出展 その他デザインフェスタなどのイベントを中心に出展活動中 【instagram】@superrocknroll 【tumblr】http://suparoke.tumblr.com 【base.shop】http://superrock.thebase.in/ 【筆者プロフィール】 本村ひろみ 那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学造形芸術科修了。 ラジオやテレビのレポーターを経てラジオパーソナリティとして活躍。 現在、ラジオ沖縄で「ゴーゴーダウンタウン国際通り発」(月~金曜日 18:25~18:30)、「 WE LOVE YUMING Ⅱ 」(日曜日 19時~20時)を放送中。

琉球新報社

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