【自民総裁に石破氏】不信払拭への責任重い(9月28日)
自民党総裁選で、石破茂氏は混戦を制し、次期首相に選任される見通しとなった。挑んでは敗れ、今に至る苦節を思えば、内心の喜びはひとしおに違いない。防衛、安全保障などの政策通で知られ、政治経験は豊富とされても、真価が試されるのはこれからだ。党派閥の裏金事件で失われた政治への信頼を取り戻し、国内外の課題解決に当たる重い責任を背負う。 脱派閥の総裁選はどう進むのかが注目された。最終盤は現旧派閥、党重鎮らの存在感や影響力が増し、各陣営によるすり寄り、支持議員の引き剥がしが活発化した。石破氏側も例外ではないはずだ。 勝たねば政策は具現化できない。あらゆる手を尽くすのが常道とはいえ、総裁選で掲げた政策を揺るぎなく遂行できるのか。党人事や組閣にも忖度[そんたく]が働くようでは、信は遠ざかる。 石破氏は長らく「党内野党」とやゆされ、時の政権や党執行部に異を唱える場面も少なくなかった。議員の支持獲得が最大の課題とされる背景としても語られてきた。今回は最初の議員票こそ伸び悩んだものの、決選投票は他候補の票が寄せ集まり、高市早苗氏に逆転勝ちした。
石破、高市両氏のどちらが次期衆院選、続く参院選を優位に戦えるのか、といった思惑が作用するのも総裁選びの常と言える。しかし、政権を預かる党と党所属議員に求められるのは、国民生活の苦境と国際社会の難局を見据えた政治、政策を誠実に担う姿勢一点であるべきだ。 石破氏は、地方票では地力を示した。党員・党友が投じた票は政界の論理と一線を画し、世論の側におそらく近い。党内のしこりをなくし、別の意見もきちんと聞いた上で判断する資質は、組織を束ねる上で必要ではある。支持率が低迷した現政権の経緯を踏まえれば、旧派閥や党重鎮らのくびきを廃し、国民目線の政治をどう進めるかが何より問われる。 政治改革などの課題に謙虚に臨み、国民が検証できる仕組みをつくると、記者会見で述べた。野党との論戦を経て、早い時期の衆院解散にも言及した。政治とカネ問題などへの野党の厳しい追及に真摯[しんし]に向き合い、説明責任を果たすのか。しっかりと見極めねばならない。(五十嵐稔)