「2島返還プラスアルファ」論も記載 公開された「外交文書」とは?
今回の公開に政府の意図は関係しているのか?
最後に、今回の公開において日本政府が進めようとしているロシアとの平和条約・領土問題交渉に関係する意図が働いていたかの問題ですが、「歯舞、色丹プラスアルファ」に関する記述は政府の考えを記したものではなく、新聞報道の中で言及されたことでした。また「沖縄返還が北方領土問題の解決に役立つ」というのは、1950年代、ソ連との交渉が始まる前から常識でした。 ロシアとの交渉記録は別にまとめられていることは前述しましたが、重要な記録はすべてそちらの方にあります。岸首相の訪米に関する記録の中で北方領土問題に関係する言及があったのは事実ですが、外務省としては現在の日露交渉への影響はないと判断して公開したと思います。
------------------------------------- ■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスタン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹