「死神」と批判されても―― 750人以上の安楽死を手助けしたスイスの医師 強い信念と重たい負担
取材を終えて
「どうして『死神』とまで批判されながらも、安楽死を手助けすることができるのだろうか」。私はプライシックさんの信念を支えるものが、いったい何なのかをずっと知りたいと思ってきた。 それを知るための手がかりの一端が、プライシックさんと安楽死を求める患者の間で行われた最終審査のやりとりにあった。 私は日本人2人、フランス人1人の計3人の最終審査の場に立ち会ったが、プライシックさんがいずれのケースにおいても最も時間をかけて繰り返し確認したことがある。それは「安楽死の選択が、患者本人の明確な意思に基づく」ものであるか否かについてだ。
「死にたい自分」と「生きてほしい両親」の狭間で悩みながらも安楽死を選択した日本人女性のくらんけさん(仮名)については、プライシックさんはその意思を尊重して、1度は安楽死の許可を出している。 「家族の気持ちは大切だけど、本人の意思が最優先です」。それがプライシックさんの考えであり、同行したくらんけさんの父親にもはっきりと伝えていた。 プライシックさんの信念を支えるものは「個人の意思を尊重する」ことであり、「死の自己決定権」はその最たるものであった。 その一方で、最終審査の際、「生きる道が本当に残されていないか」と、患者に再考を促すことも忘れていない。 「安楽死の許可が出た会員のうち、実際にライフサークルで安楽死を遂げる人は全体の3割です。最悪の場合は安楽死できるという心の余裕が、生きる力になる人も多いのです」 ※この記事は、TBSテレビとYahoo!ニュースによる共同連携企画です
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