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ピース・又吉直樹「作家と芸人、二つの道。憧れていた親とは違う生き方を選んで」

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婦人公論.jp

新型コロナウィルスの影響で公開延期されていた、映画『劇場』(主演・山崎賢人)が、7月17日に劇場公開と同時にAmazon Prime Videoにて全世界配信されることになった。邦画作品でこのような試みは初だという。本作品の原作は、又吉直樹さんのベストセラー小説。振り返れば、又吉さんが文芸誌に発表した初の中篇小説『火花』で芥川賞受賞の快挙を成し遂げたのは、35歳の時だった。お笑い芸人と作家の二足のわらじを履く理由、そして、40歳という節目を前に思うことを聞くとーー(撮影=小林ばく 構成=本誌編集部) 【写真】「小説は自分のために書いている」(又吉) * * * * * * * ◆ピカピカしたヒーローには感情移入できなくて 大阪で生まれ育った僕は、ほかの多くの子どもがそうだったように、小さい頃から吉本新喜劇が大好きでした。小学5年生くらいの時にはダウンタウンさんに夢中になり、その頃から夢は芸人になることで、自分で考えたネタをノートに書いたりして。 一方、中学時代に読書の面白さにも目覚めました。国語の教科書に載っていた芥川龍之介の「トロッコ」を読んだ時、主人公の少年の心情がまるで自分のことのようによくわかり、とても驚いたんです。それで芥川のほかの作品も読んでみて、僕は本を読むのが好きなんだなあと気がついた。 でも、僕の家は本がたくさんあるような家ではなかったし、本好きの友達がいたわけでもない。サッカー部だったんですけど、本を読んでいるやつは珍しいくらいで。最初は教科書しか手がかりがないわけです。 自分が面白いなと思う小説の作者を国語便覧で調べてみると、どうやら、このへんに載っているいかつめの顔をした作家が僕は好きなんやとわかってきた。芥川や太宰治、尾崎紅葉、泉鏡花、森鴎外、夏目漱石、谷崎潤一郎……、面白いと思った作家の作品を次々読んでいきました。 みんなとサッカーしたり、遊んだりするのも楽しいけど、一人でいるほうが自分には合ってるのかな、という自覚はありました。小さい頃、友達とヒーローごっこする時、順番に役を取っていくじゃないですか、「俺、レッド」とか。僕は、取ったことないんです。3人いたら3番目、5人いたら5番目でした。ピカピカしたヒーローは、あまりにも自分と共通点がなくて、感情移入できなくて。水木しげる先生の『ゲゲゲの鬼太郎』とか、ちょっとダークヒーローみたいなものに憧れていました。 保育所の先生に、「いつも後ろにいたらあかん」と言われたことがあったけれど、僕自身はストレスを感じていなくて、そういう役回りだと思っていたんです。でも、「そっか、人についていっているだけ、と思われるんや」と、自分の感覚と人が感じる印象は違うこともあると気づいた瞬間でした。

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