「不動産投資は、チャリンチャリンお金が入る不労所得ではない」 借金2億だった20代から復活、リニア開通をにらむ不動産賃貸会社社長 ~山長・後編
◆リニア中央新幹線開業でプチバブル到来か?
――今後の展望を教えてください。 山梨県は他の地方都市と同様、人口が減少していきます。 賃貸物件を利用する人が多い生産年齢人口(15~64歳)は、2020年の約47万人に対して、2050年には30万人まで減ってしまうと予想されています。 そうなると、空室率が悪化するのは明白です。 今後は、恐らく二極化がさらに加速して、賃貸物件どころか管理会社まで淘汰されてしまう可能性が高いでしょう。 今は築年数だけで物件を判断する方は少なくなってきました。 私の物件はまだ築30年なので、築50年くらいになるまで頑張ってもらいたい。 リノベーションを繰り返することによって、住みたいと思われるような付加価値の高い賃貸物件にしていきたいですね。 具体的には、これから高齢者人口が増えていくので、高齢者向けの賃貸物件というのも検討したいと考えています。 ――山長の物件は、甲府市中心部ではなく、南の郊外に位置していますよね。 私の物件がある甲府市大里町は、リニア中央新幹線の駅予定地のすぐ近くです。 クルマで甲府駅に出るのと、リニアで東京の品川駅に出るのでは、同じくらいの時間です。 リニアが開通すれば、このエリアは活性化するでしょう。
◆あれだけ恨んでいた父と祖父に今は感謝
――長田さんは赤字アパートを相続して大変な思いをしましたが、事業承継で大切なことは何だと思いますか? 3つあります。 1つは、遺言書の大切さです。 先代が生きているうちに事業を承継するとは限りません。 もし、先代が亡くなってしまったら、遺言書があるのとないのとでは、事業承継のやりやすさがまるで違います。 2つ目は、できたらお金は残すべきです。 実は、祖父がアパート経営を始めたころは利益が出ていたようです。 ところが、浪費してしまって、私が相続したときは内部留保がありませんでした。 内部留保がないと、次の世代が困る可能性があります。 3つ目はイノベーションの大切さです。 現状維持は絶対に通用しません。 失敗を恐れずに、自分で考えたことをとにかくやってみるしかありません。 失敗から学ぶことからしか、失敗は減らせません。 ――長田さんは、承継に際して先代、先々代から何も教われなかったわけですね。 そうです。 経営方針について先代と後継者の意見が衝突するという話を耳にすることがありますが、私の場合、父も祖父も亡くなっていたので、けんかすらできませんでした。 けんかできるということは、教えてもらえることの裏返しです。 ――28歳で2億円の借金を相続する人はなかなかいません。改めて振り返って、どのように感じますか? 事業を承継したときは、父や祖父を恨んでいました。 しかし、今は違います。 借金があるということは、借りられる能力があるから銀行は貸したわけです。 ギャンブルで2億の借金を背負ったわけではありません。 銀行がお金を貸せるような事業を受け継げたと考えると、私はなんて幸運なんだと今は思います。 最初は2億の借金なんて絶対に返せないと絶望していた長田穣が、今は当たり前のように返しています。 毎月ある程度の利益も残すことができています。 あれだけ憎んでいた父と祖父に、今は感謝しています。
■プロフィール
長田譲氏 有限会社山長 代表取締役 1978年山梨県生まれ。東海大学文学部卒業後、住宅メーカーの営業職や派遣社員などを経験。2007年、祖父の死去に伴いアパート2棟を相続。会社勤めのかたわら、アパートを経営。2015年、母親が継いでいた有限会社山長を承継し、代表取締役就任。