「セルフチェックに頼らず定期的な受診と、正しいルールの確立と運用を」乳がん検診の実情に専門医が指摘
乳がんの早期検診を推進する活動を行う「ピンクリボンフェスティバル」のデザイン大賞で、グランプリを受賞したポスターが批判を浴び、「日本対がん協会」が謝罪文を掲載した問題。 【映像】乳がん啓発や検診どうあるべき?経験者が伝えたい情報
一方で、厚生労働省の調査によれば、乳がん検診の40~69歳の受診率は44.9%(平成28年国民生活基礎調査)となっていて、欧米に比べて低い水準に留まっている。
「ピンクリボン運動」に取り組む女性たちを15年以上にわたり取材する中で、自身も乳がんとの診断を受け、46歳で左右の胸を同時に失った北海道テレビ放送の阿久津友紀氏は、「私が取材を始めた頃の受診率は20%台だったので、今の44.6%をどう見るかということ。これに自治体の検診は含まれているが、会社の定期健診が含まれているかといえば、実際には掴めてないところがある。欧米諸国は受診率が80%に達しているが、それでも8人に1人が乳がんにかかるといわれている」と話す。
「40代になると罹患率のカーブが立ち上ってくるわけだが、20代でも罹っている人もいるわけで、どう早期発見で見つけていくのかということを考える。これまで取材を続けた中では、20代、30代の中でも、遺伝などのリスクが高い方は検診を早く受けるべきだと思う。私の場合も、母親が乳がんに罹ったので20代から受けていて、それで見つかった。例えば厚生労働省は40歳以上の人はマンモグラフィを受けてくださいといっているし、検診によって死亡率は下がるともいわれている。もちろんメリットもデメリットもあるので、自分に合った検診はどういうものなのかを知って、命を守っていただきたい」。
ベルーガクリニック院長の富永祐司医師(乳癌学会認定医)は「乳がんを予防するお薬があるわけでもないので、手がない。やっと遺伝子の検査が出てきたが、あくまでも遺伝性のご家庭だけの問題なので、自然にできる乳がんというのは防ぎようがなく、見つけるしかないというのが正直なところだ。ただし、“検診を受ければ生存率が上がる”というエビデンスはなく、あくまでも“そうだろう”という話だ。検診によって見つけることができるというメリットもあるが、放射線に当たってしまい、それによってがんができる可能性もある、というデメリットもある」と指摘する。