「あたりまえの日本」が刺さる、根強い親日・台湾人旅行者たちの本音 韓流とは「重みが違う」
2024年9月に日本を訪れた外国人旅行者は287万人を超え、月ごとの過去最多を更新した。自動車などに次ぐ外資獲得産業として期待されるインバウンド(訪日客消費)市場において、最も「手堅い」といわれるのが、台湾からの観光客だ。 親日の代表国とも言われる彼らを突き動かすのは、いったい何なのか。その背景や最近のトレンドについて、台湾ビジネスに詳しい台北経済新聞編集長でカケハシ社CEOの秋山光輔から話を聞いた。
根強い人気が続く日本旅行
──台湾からの訪日観光客の最近の動向やトレンドは? 台湾の全人口が約2300万人なんですが、うち、年間約500万人が訪日しています。この数にはリピーターも含まれているものの、人口比率から見ると台湾人にとって日本はたいへん人気のある旅行先であることがうかがえると思います。 最も顕著な動きは数十年前に訪れました。 日本では小室ファミリー、浜崎あゆみ、宇多田ヒカルなどが流行していた時期、台湾では日本のアニメやドラマ、音楽などあらゆる分野で台湾中が「日本一色」で埋め尽くされるような状態になりました。LCCなどもなく、現在ほど気軽に行けるような場所でもなかった日本は、台湾にとっては「憧れ」の対象として高い関心を集めました。 以来、日本や日本の生み出すコンテンツは、台湾においては根強い人気を維持し続けています。 最近の顕著なトレンドとしては、日本旅行についての情報入手経路が書籍からSNSへと変化したこと、地方への旅行が増えたことの2点です。 長らく、日本旅行の情報収集は本屋における旅行ガイドによるものが一般的でした。しかし、現在はインターネットやSNSによる情報収集が大半です。インスタ、TikTokも人気ではありますが(小紅書・REDは限定的)、台湾における主力のSNSはFacebookです。アカウント保有率は全人口の約90%で、お年寄りから若年層までほぼ全員がFBを利用しています。 FBで流れるリール動画(短い動画)やインフルエンサーが拡散した写真・動画を基に「同じような写真を撮りたい」「ここに行ってみたい」と多くの方が感じ、それが日本旅行の強いインセンティブとなっているようです。 SNSによる情報伝達が盛んになっていくのに伴って、台湾から日本の地方都市へのLCCが増便され、東京・京阪神・沖縄といった台湾人にとっての定番スポット以外の地が新たに人気を集めるようになりました。現在、台湾では「日本の秘境温泉」や「四国一周」といったような、定番スポットからは外れた、ニッチなテーマ性を持つ地方旅行が人気を集めています。 ──K-POPや韓流ファッション、韓国コスメなどがアジア全土で人気です。エンターテインメント分野においては日本は韓国に後れを取っているように感じますが、インバウンドには影響ないのでしょうか? はい。影響はそれほどありません。 台湾について語る上で日本の方に押さえていただきたい一番のポイントが、「台湾人は日本が大好き」であることです。 ご存知の通り、日本は日清戦争後から第二次世界大戦終結まで台湾を併合していました。当時、日本人は台湾人に残酷なこともたくさんしましたし、さまざまな意見はありますが、総合的に見て「日本に統治されていてよかった」と考える層が大半を占めていると感じます。