観光ホテル? エコノミーホテル? 「うちをビジネスホテルと呼ばないで!」問題を考える
前回の連載『ドーミーインはビジネスホテルと呼べるのか 業界人を悩ます「くくり」問題』では、宿泊特化型ホテル事業者の声を端緒とした“ビジネスホテルと呼ばれる違和感”について問題提起した。 【画像】すごいビジネスホテル これまで日本で定着してきたホテルカテゴリー(タイトルではくくりと表した)を整理し、ボーダーレス化を指摘してきた筆者の考察を述べつつ、宿泊特化型ホテルにおける競合→差別化という流れを追った。 さらに、ドーミーインが展開する和風ビジネスホテルを例として、“ビジネスホテル”をアイデンティティーとし、そのワードが持つパワーをブランディングに生かす例も示した。同様に自らビジネスホテルと呼称するケースは、「ホテル・ビジネスホテル予約は東横イン」「全国ビジネスホテル・チェーンのスーパーホテル」(各公式Webサイトより)など、機能性、利便性、ローコストというイメージのホテルチェーンが並ぶ。 確かに、宿泊特化型タイプのホテルを表現する言葉として“ビジネスホテル”はその代表格といえるものの、多様な宿泊特化型ホテルが誕生している現状を鑑みつつ、本記事では、宿泊特化型のホテルが、世間的に“ビジネスホテル”と呼称される事実と、それに違和感を覚える事業者の声を深掘りしていく。 ※画像を全て閲覧できない場合は「ITmediaビジネスオンライン」内でご覧ください
ビジネスホテルの語源
そもそもビジネスホテルの起源(語源)はいかなるものか。語源をたどってみると、各地で展開する「ホテル法華クラブ」(運営:法華倶楽部)にたどり着く。創業は大正9年(1920年)で、京都へお寺参りに訪れるゲストのための旅館を起源とする。 昭和30年代後半にはビジネスホテルに業態転換したといい、同ホテルのWebサイトによると、「今や一般的となったビジネスホテルという言葉は、当社が先駆けとして開発した画期的なもの」としている。 この“ビジネスホテル”という言葉は、宿泊特化タイプホテルの大衆化・拡大化と共に広く用いられ、ホテルといえば“シティホテル/ビジネスホテル”というくくりが広く認知され、マスメディアでも多用されてきた(二つの違いについては前編を参照)。 ビジネスホテルは出張族に主眼のおかれた、まさに“ビジネス需要”に呼応してきたわけだが、「ビジネスホテル」というキャッチーなワードが一般化されていったことで、ホテルは言葉の持つ力の恩恵にあずかってきたとも分析できる。 ところで、法華倶楽部というと、筆者個人としては「アルモントホテル」も印象に残るブランドだ。京都駅八条口への開業当初に宿泊した経験があるが、宿泊特化としながらもハイクラスな内容であった。 アルモントホテルは2012年から展開している。この時期といえば、インバウンド活況への序章的な時期でもあり、公式Webサイトによると「観光利用のゲスト向けに開発した」としていて、同社の先駆け的な符号も見える。 この、「新たな観光向けホテル開発」という表現も興味深い。同社が、ビジネスホテルの起源としてビジネス需要を大いに取り込んできたとすると、「新たな観光向けホテル開発」というフェーズは、宿泊に特化したホテルにおいても、近年の観光ブームと訪日外国人旅行者需要が、新たな創出につながったことを示している。