ワインで地域づくり、熟成への道 山鹿市・菊鹿ワイナリー開業2年
1999年春、生産者3軒から始まった熊本県山鹿市菊鹿町のワイン用ブドウ栽培。関係者の努力が実を結び、2018年11月、同町相良に「菊鹿ワイナリー」が誕生した。多くの人々を引きつけ、ときに“神のしずく”とも称されるワインが地域にもたらしたものは-。(河内正一郎) シャルドネ 世界から称賛 供給追い付かず、一時品薄に さわやかな秋晴れに恵まれた2020年11月8日。開業2周年を迎えた山鹿市の菊鹿ワイナリーは、県内各地や福岡県から訪れる観光客でにぎわっていた。 醸造所に併設した熊本ワイン(熊本市北区)のショップには、限定販売の新酒がずらり。試飲コーナーやレストランだけではなく、市の観光施設「アイラリッジ」でもワインとピザが楽しめる。 訪れるのは2度目という福岡県柳川市の主婦、前田栄子さん(59)は「ここの白ワインはさっぱりして飲みやすく、すっかりファンになりました」。自宅でゆっくり味わいたいと、同じ銘柄を3本買って帰りの車に乗り込んだ。 さかのぼること2年前。ワイナリーの開業式典には、県内の酒販売関係者のほか、機内サービスに採用する航空大手の関係者ら200人が詰め掛けた。
参加した東京都の酒卸売会社の担当者は「各地にワイナリーが乱立する中、熊本ワインの技術は抜きんでている」と称賛。一同の期待を裏付けていたのは、看板商品「菊鹿シャルドネ」の数々のコンクール受賞歴だ。 2009年、アジア圏最大規模の「ジャパン・ワイン・チャレンジ」で、未明に収穫したシャルドネ種で造るナイトハーベストが「最優秀新世界白ワイン」を獲得。20年3月には、フランスの国際コンクール「シャルドネ・デュ・モンド」のシルバーメダルに国内で唯一選ばれた。 世界からお墨付きを得たことで、菊鹿シャルドネの人気は沸騰。熊本ワインの幸山賢一社長(46)は「ワインの出来の8割は原料のブドウで決まる。農家と二人三脚で、菊鹿のブドウを生かす努力を重ねてきた」と胸を張る。 菊鹿ワイナリーの開業で、同社の醸造所・ワインショップは西里醸造所(熊本市北区)と合わせ2カ所になった。売上高や生産本数は非公表だが、菊鹿ワイナリー1年目のレジ通過客数は約3万5千人。新型コロナウイルスの影響を受けた2年目も約2万人を記録し、売り上げを押し上げた。