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欧州理事会の結果と今後の展望

配信

NRI研究員の時事解説

はじめに

4月23日(現地)の午後にテレビ会議で開催された欧州理事会(European Council)は、経済回復に向けたロードマップに合意した一方で、復興基金(Recovery Fund)について「実現に向けた政治的な合意」を得るに止まった。 理事会のミシェル議長と欧州委員会(European Commission)のフォン・デア・ライエン委員長による共同記者会見の内容も含めて、今回の結論と展望を検討したい。

経済回復のためのロードマップ

ミシェル議長が会合に先立ってメンバーに送付した招待状(21日付け)によれば、今回の主要な議題は、4月9日に欧州委員会が決定した対応策の確認に加えて、欧州経済の回復に向けたロードマップについて合意を得ることにあった。 理事会が公表しているロードマップ(案)によれば、対策の柱として、(1)機能の高い強化された単一市場(single market)、(2)前例のない投資活動、(3)グローバルな活動、(4)EUのガバナンス機能の4点を挙げている。 このうち(1)では環境対策やデジタリゼーション、銀行同盟や資本市場同盟の推進に加え、中小企業や新興企業の育成、対内直接投資の効率的な規制が挙げられた。また、(3)ではCovid-19対策に関し、G20やWTOとの連携を含む多国的アプローチの重視や、アフリカ等の近隣諸国への支援を掲げている。さらに(4)では、域内諸国の団結とともに、法の支配や人権の尊重といった基本理念が確認されている。 このように、ロードマップの大半は概念的な性格の強い「方針」であり、会合での合意は比較的容易であったと思われる。これに対して(2)には域内の主要国で意見の異なる領域が含まれている。 つまり(2)では、域内経済の回復のためには「(第二次世界大戦後の)マーシャルプラン」のような投資活動が必要と指摘し、上記(1) で指摘した分野や経済格差の是正、共通の農業政策といった分野での投資活動を官民ともに推進することの重要性を指摘した。 加えて 、 1) 次の多年次財政枠組み( Multiannual Financial Framework<MFF>)がEU全体としての政策戦略の実現だけでなく、域内国による経済回復の支援にとって重要であり、早期の合意が必要であること、2) 欧州投資銀行(European Investment Bank<EIB>)の活動が極めて重要であることを主張している。 次節で復興基金を検討する際にも関係するので、MFFを概観しておくと、EUの中期(7年間)にわたる予算規模と主要な政策分野への資金配分を決定するもので、毎年の予算の執行はこの枠組みに制約を受ける。MFFはEUの基本条約(リスボン条約)の第312条に規定され、欧州委員会が原案を作成し、欧州理事会が是全会一致で合意し、欧州議会の同意を得た上で発効する。 現在のMFFは2014~2020年を対象としており、今年度で失効する。このため、昨年末に欧州委員会が次のMFF(2021~2027年)の案を欧州理事会に提示し、Covid-19問題が深刻化する直前の会合(2月20~21日)で議論したが合意が得られなかった報道。によれば、総額(従来は域内GDPの1%が目途)とともに、環境対策への傾斜配分に関して意見の相違があったようだ。 このため、今回の会合でロードマップに合意しても、次期MFFに関する議論では戦略分野別の優先度に関して意見の相違が残るリスクがある。