盗掘で消えるスーダンの歴史、金を求め遺跡を破壊 重機の利用も
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【9月26日 AFP】考古学者の一団が今年7月、スーダン奥地の砂漠に位置する古代遺跡ジャバル・マラガ(Jabal Maragha)に到着すると、そこにあるはずの遺跡が無くなっていた。チームは当初、違う場所にたどり着いたのではと考えた。 そこは目的地の遺跡で間違いなかった。ただ、巨大な掘削機を有する盗掘者らによって、2000年の歴史を誇る遺跡のほぼすべてが破壊されてしまっていた。 「盗掘者がここを掘る理由はたった一つだけ──金(ゴールド)を見つけるためだ」 1999年から慎重に遺跡の発掘を進めていた考古学者のハバブ・イドリス・アハメド(Habab Idriss Ahmed)氏は、悲しみの表情で話す。 「手早く終わらせるために重機を使った。とんでもないことだ」 スーダンの首都ハルツームから約270キロ北に位置する灼熱(しゃくねつ)のバユダ(Bayouda)砂漠で、考古学者の一団は掘削機2台と作業中の5人を見つけた。盗掘者らが掘った穴は、深さ17メートル、長さ20メートルにも及んでいた。 メロエ(Meroe)王国時代にさかのぼる遺跡は、紀元前350年前から紀元350年にかけてのものとみられ、当時の小さな集落または検問所だったと考えられている。ただ、盗掘者が掘り起こしてしまったため、今はほぼ何も残っていない。 「地面は砂岩と黄鉄鉱の層で形成されているため、盗掘者は何もかもを掘り返していった」と遺跡と博物館の管轄機関で責任者を務めるハテム・ヌール(Hatem al-Nour)氏は述べた。 「この岩が金属を含むため、盗掘者の探知機が反応したのだろう。そして彼らは金があると思った」 考古学者の一団には警察官が同行していたため、盗掘者らは警察署に連行された。しかし、数時間のうちに解放されてしまった。 スーダンの考古学者らは、これは特異な例ではなく、組織的な遺跡略奪の一部だと警告する。 ナイル川(Nile River)流域に位置する全長12キロのサイ(Sai)島では、数百か所もの埋葬所が略奪者によって荒らされ、破壊された。そのうちの一部は古代エジプト王朝時代にさかのぼるとされる。 スーダンの古代文明はエジプトよりも多くのピラミッドを建造したが、その多くはいまだ調査されていない。 現在、墓所から寺院に至るまでの数百か所で、日々の生活を改善する「何か」を求めて盗掘者らは活動を続けている。 ■ゴールドラッシュ スーダンは南アフリカとガーナに続きアフリカで3番目に金の産出量が多い国で、商業採掘は2019年、スーダン政府に12億2000万ドル(約1300億円)をもたらした。 過去には、ナイル川の支流である青ナイル川(Blue Nile)と白ナイル川(White Nile)が交わるハルツームの対岸に位置する町オムドゥルマン(Omdurman)で砂金を探し、幸運を試す人たちもいた。 しかし、発見される砂金の量はわずかだった。 そして1990年代後半、考古学者らが科学的調査で金属探知機を使用しているのを人々は目にした。 「考古学者が何かを掘り起こし探しているのを見た時、人々はそれが金だと思ったのでしょう」と、政府の遺跡部門に携わってたこともある専門家のマハムード・タイブマハムード・タイブ(Mahmoud al-Tayeb)氏は述べた。 ■「尊厳の根拠」 さらに悪いことに、裕福な実業家らが掘削機を用意する傍ら、地元当局は若者と失業者に宝探しを推奨してきた。 「スーダンの著明な遺跡約1000か所のうち、少なくとも100か所が破壊もしくは損傷を受けている」とヌール氏は述べる。そして、「1人の警察官が遺跡30か所を担当する…そしてその警察官は通信機器や適切な交通手段も持っていない」ことを指摘した。 しかし、根本的な問題は警備の不足ではなく、政府の優先順位にあるとタイブ氏は言う。 「警察官の問題ではない」 「それは、自分たちの歴史や遺産をどう扱うか? という重大な問題だ。それが主要な問いだ。しかし、遺産は政府にとって優先事項ではない、すると何ができるだろう?」 こうした状況にヌール氏は、「歴史や遺産はスーダン人の調和に欠かせない」と述べ、「スーダン人は、自身の歴史から尊厳の根拠を得るからだ」と話した。 映像は8月20日撮影。(c)AFPBB News