公明、自民に強気要求 夫婦別姓、核兵器禁止条約…来夏の決戦控え埋没に危機感
先の衆院選後、公明党が連立政権を組む自民党に対して強気な要求を繰り返している。自公が少数与党に転落したことで野党の国民民主党の政権運営への発言力が増しており、公明が埋没の危機感を募らせているためだ。独自色の強い政策で自民から譲歩を引き出し、来年夏に控える東京都議選、参院選という2大決戦に向けたアピールにつなげようとしている。 「公明が自民と野党の間をつないで合意形成を図ることはこれまでもあった。その経験を生かして(与野党の)合意形成を図りたい」 公明の斉藤鉄夫代表は29日、記者団にこう強調した。国民民主が主張する「年収103万円の壁」の引き上げに関し、自公と国民民主3党の協議が続いているが、「年収の壁」解消を掲げてきた公明内には、政策実現の好機と捉える声がある。同時に、「埋没してしまう」(幹部)といった見方も根強い。 公明は衆院選で公示前の32議席から24議席に減らした。来年の参院選についても「正直なところ、今のままでは国民民主に勝てる要素がない」(党関係者)と危機感を募らせる。 自民の派閥パーティー収入不記載事件を巡っては、斉藤氏が就任直後に石破茂首相(自民総裁)と官邸で会談し、「けじめをつけてほしい」と要求した。「政治倫理審査会にも出ていない、何の説明もしていないということでは、けじめをとったことにはならない」との立場だ。 自民と意見が分かれる政策に関しても公明が自民への〝圧力〟を強めている。斉藤氏は14日のBS番組で、選択的夫婦別姓制度の導入を巡り、「自民も賛成して整備するように、連立のパートナー、友党として働きかけていきたい」と踏み込んだ。議論の場となる衆院法務委員会で導入に賛成する立憲民主党が委員長ポストを獲得したことについても「実現に向けて一つ進んだ状況になった」と評価した。 27日には首相に、来年3月の核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加などを求めた。首相は、オブザーバー参加しているドイツに触れ、「ドイツでどのような議論があって参加に至ったのか、検証する必要がある」と応じた。 斉藤氏は28日の党会合で首相の回答について「これまで固い姿勢だったのが、0・1ミリぐらい前に進んだのかなと感じている」と語ったが、ある党幹部は「10メートルくらい進んでもらわないと困る」と強気の姿勢を崩さない。(長橋和之)