なぜネパール人がインド料理を出すのか 広がるカレービジネスと10倍に増えた夜間中学生
日本人の好みにあわせ、スパイスを控えて甘めに味付けしたバターチキンカレー、巨大でやわらかいナン、タンドリーチキンの組み合わせが王道のメニューだ。ネパールの食文化にこだわらないのは「出稼ぎで食べていく」「母国の家族に送金する」ためであり、「日本人がイメージするインド料理を提供した方が成功する確率が高いという安心感、安全策としてのコピペ文化が根底にある」と室橋さんは指摘する。
コックが経営者となれば新たなコックの招聘(しょうへい)が必要となり、やがてブローカーが介在するようになる。コックを呼ぶほど儲(もう)かることから、カレー店は「人を呼ぶための装置」となって急増。こうして同じようなメニューを出すインネパが全国津々浦々に広がった。
室橋さんは「インネパはある意味、移民料理だと思う。ネパール人が日本で生きていくための工夫がちりばめられている」と語る。
「カレー屋の子供たち」をめぐる教育課題はさまざまあり、室橋さんは、日本語もネパール語も中途半端な「ダブルリミテッド」の増加や、子供の教育に関心を向けない親がいることを懸念。また、子供たちの受け皿となっている夜間中学や定時制高校など学校現場をサポートする公的支援の必要性にも言及した。
「外国人問題は労働力問題で、『移民』をどう考えるのかが問われる。受け入れるのなら単なる安価な労働力としてではなく、社会の成員として扱い、日本語や日本社会の仕組みを教えるべきだ。そして、外国人も日本語を学び、日本社会になじむように努力してほしい。双方に課題がある」と強調した。
■日本国籍を抜いて最多
出入国在留管理庁の統計によると、2024年6月末時点での在留ネパール人は20万6898人(国籍・地域別6位)で、14年末時点の4万2346人の5倍近くに上る。在留資格の約3割を家族滞在が占めるのが特徴で、室橋さんは「ほとんどがカレービジネス関係の家族とみられる」と話す。
その影響は、夜間中学のネパール人生徒数に反映されている。近畿夜間中学校連絡協議会によると、14年9月時点のネパール人生徒は6校に28人だったが、24年9月時点では全19校に約10倍の273人が在籍。日本国籍を抜いて最多で、なかには生徒の半数を占める学校もある。多くは高校進学希望という。