水没の危機迫る島国ツバルを、ドメイン「.tv」で救え! 日本人写真家・遠藤秀一の奮闘録
「.tvで環境保護を!」とツバル政府に提案
30歳で設計の道を離れた遠藤さんは、インターネットベースの仕事をする会社を立ち上げる。1996年、ちょうどインターネットが普及し始めた頃だった。
「当時はインターネット黎明期で、さまざまな可能性がネット上にちらばっていました。せっかくだから、ネットでも環境保護ができればいいなと思い、可能性を秘めたものを探しているうちに、ツバルのトップレベルドメイン『.tv』に行き当たりました」 トップレベルドメインというのは、URLの末尾につく「.」以降の文字列で、いうなればインターネット上の国コード。日本は「.jp」、アメリカなら「.us」、イギリス「.uk 」フランス「.fr」韓国「.kr」というように、国際機関から各国に割り当てられている。ツバルは「Tuvalu」なので、トップレベルドメインは「.tv」となっている。 「日本を始め、多くの国ではホームペーシアドレスのドメインネーム発行作業は管理権のある民間企業が担っています。例えば日本の.jpはJPNICという会社が発行管理業務を行っていました。ところが調べてみると、当時ツバルでは、.tvの国コードを国際機関から与えられただけで、発行管理業務をする会社が不在だったため、.tvドメインを使用したくても取得できない状態になっていました。そこで、このドメインの管理権を得て、.tvドメインを管理販売して得た収入を、環境保護につかえないかと思いはじめたのです。ツバルから気候変動防止の声をあげていけたら、素晴らしいじゃないですか」 だが当時の遠藤さんには、ツバル政府へのコネもツテもなかった。あちこちに問い合わせ、最終的には、キリバス・ツバル総領事館からツバル政府の連絡先を得ることに成功。そして、FAXで提案してみることに。 「ドメインの利用はこんな仕組みになっていて、こういうふうにお金が儲かって……みたいなことを書いて送ったわけです。でも、何のリアクションもなかった。ところが2年くらい経過して、自分でもFAXを送ったことさえ忘れかけていた頃、朝起きたら、ツバル政府からFAXが届いていたのです。『あなたと同じようなことを提案してくる人が何人かいますので、みんなで集まって相談したいのです。ついては2週間後にミーティングを開きますから、ぜひツバルに来てください』といった内容。最後に『ただし、自腹でね』とありました(笑)」