【名作照明に恋して】Vol.04 満月のようなラウンドシェイプが心を満たす、テーブルランプ。
窓辺や部屋のコーナー、シェルフやベッドサイドに置きたいテーブルランプ。照らす範囲は限られていても、小さな明かりが空間に与える効果は絶大だ。点灯時はもちろん、昼間もそこにあるだけで美しいオブジェのようなテーブルランプを紹介する。 【続きを読む】単一素材が引き立てる、グラフィカルな美しいシルエット バウハウスを代表するヴィルヘルム・ワーゲンフェルド、イタリア・モダンデザインを育てたジオ・ポンティとヴィコ・マジストレッティ、現在のデザインシーンを牽引するジャスパー・モリソンとマイケル・アナスタシアデス。いつの時代もデザイナーたちが挑む、ラウンドシェイプのランプ。温かみのある光は、どこか満月を眺めるような満ち足りた気持ちにさせてくれる。
バウハウスが生んだ、工業デザインランプの先駆け。
バウハウス出身のプロダクトデザイナー、ヴィルヘルム・ワーゲンフェルドのテーブルランプはドイツのテクノルーメン社製。装飾的なランプが主流であった1920年代に、余分な要素を極限まで削ぎ落とし、円と直線で構成されたシンプルさを叶えた。工芸と芸術の融合を目指したバウハウスの哲学を体現するデザインが、「バウハウスランプ」と呼ばれる所以だ。 テクノルーメンの創業者であるウォルター・シュネペルは、ワーゲンフェルドのスタジオを訪ねた時に埃をかぶったこのランプと出合う。学生時代にデザインしたまま、これまでに製造業者がいなかったことを知り、自ら製造を決意する。大量生産を前提とした設計ではあるが、当時のディテールに忠実に製作しているため、ガラス職人や金属工による手仕事が鍵だ。ワーゲンフェルドが生まれたブレーメンで、いまもていねいに組み立てられている。
イタリア・モダンデザインの父の手による、名作照明。
球体と円錐という幾何学的なモチーフを組み合わせた「ビリア」。デザインしたのはイタリア・モダンデザインの父と呼ばれる建築家、ジオ・ポンティだ。 ポンティは1932年、ミラノのドゥオーモにもステンドグラスを収めるガラスメーカーのルイージフォンタナ社内に照明ブランド、フォンタナ・アルテを創設する。同社でガラスを扱ううち、ポンティは照明器具やオブジェの制作に力を入れるようになっていた。「ビリア」はその黎明期ともいえる時期の作品だ。アンバランスなコーンの上のボールは佇まいにどこか愛嬌がある。色違いで真鍮、ブラックがあり、ひと回り小さい「ビリア ミニ」は、ポンティのスケッチから復刻したレッドやイエローなどビビッドなカラー展開も。20世紀のイタリアモダンを象徴する名作ランプは、90年の時を経たいまも輝き続けている。
文:佐藤早苗 写真:岡村昌宏(CROSSOVER)