耳が聞こえない私から「逃げなかった」ママ友 偶然の出会いに得た縁〝精神的な垣根〟を持たずに交わる強さ
聴覚障害当事者の女性が手掛けた実録漫画が、ツイッター上で注目を集めています。買い物に出た先で、偶然知り合ったママ友。心の壁を感じさせない、朗らかな応対のおかげで実現した、快い交流について振り返る内容です。どうすれば、立場の違いを超えて、コミュニケーションを取ることができるのか。作者に聞きました。(withnews編集部・神戸郁人) 【画像】ミカヅキユミさんの漫画全編はこちら。心と心で、誰かとつながる尊さをかみしめたくなる作品です。
意外なほど積極的な、見知らぬ母親
今月11日、8ページの漫画がツイートされました。作者は9歳の息子と5歳の娘、夫との日常を描いている、ろう者(耳が聞こえない人)のイラストレーター・ミカヅキユミさん(@mikazuki_yumi)です。 約8年前のある日、ミカヅキさんは、息子と一緒にショッピングモールを訪れていました。そこで息子と同年代の男の子と鉢合わせ、子ども同士意気投合。ミカヅキさんも、後ろに控えていた母親にあいさつします。 障害のことを説明すると、「手話したり口みてはなすんですか?」「私の口読めますかね?」「わからなかったら言って下さい」。予想と裏腹に、母親は交流に積極的だったのです。 ミカヅキさんは、母親の唇の動きを観察しながら、その言葉を理解しました。互いにうまが合い、別れを惜しむほど仲良くなった二人。それから3カ月が経った頃、別の場所にある子ども服店で再会し、連絡先を交換しました。
安心感を与えてくれた不思議な「におい」
ミカヅキさんは後日、「サヤちゃん」と名乗る母親と、子育て支援センターで三度目の対面を果たしました。そしてコミュニケーションを取るうち、不思議な感覚を抱くようになります。 「プレイルームで紙芝居やるって」「アンパンマン体操始まるよ」。サヤちゃんはちょうど良いタイミングで、周囲の状況を教えてくれたのです。過去に、耳が聞こえない人と話した経験があるのでは……。ミカヅキさんは、疑問をぶつけました。 「うん! 小学生のときの同級生」「口の動き読んでお話ししてたよ」。ミカヅキさんは、ようやく気付きました。幼少期に出会い、偏見無く付き合ってくれた、耳が聞こえる友人たちと同じ「におい」を、サヤちゃんからかぎ取っていたことに。 まるで過去の友人が成長し、目の前に現れてくれたようだ――。奇妙な縁をつないだ人物に感謝した後、その正体が明かされる場面で、物語は幕を閉じます。ツイートには「神様っているんだ」とのコメントの他、6万近い「いいね」がつきました。