コロナ禍で「食事への罪悪感」増加のなぜ?
健康志向がもたらす「食への責任」
外出自粛期間中、スーパーの食品棚が空になった。外食ができなくなり、テイクアウトをはじめる店が急増した。自炊が増えた。免疫力を高める食品が注目された――。コロナ禍により、誰しもが大きな変化を受けたのは「食」ではないだろうか。健康志向の急激な高まりから、食事に関し健康を維持できるかどうかが重要視される傾向が強まった。食に課された役割が重くなっている現状が見えてきた。 「免疫力をつける」ってどういうこと?必要な栄養源とは? 自粛期間中に「食事への罪悪感」が増したと回答した人は55%―マルコメ(長野市)が行ったアンケート結果だ(※1)。コロナ太りや健康維持に配慮した食事が注目される中、健康志向がより強化された背景から、食に対する罪悪感が生まれている。 例えば、コロナ禍では「糖質ゼロ」などの機能性ビール類の売上が伸長した。アサヒビールでは糖質ゼロ発泡酒「スタイルフリー<生>」の販売数量が1―11月で前年比104%増。キリンビールでも10月に発売した「キリン一番搾り 糖質ゼロ」が、発売から1カ月で年間販売目標の8割を達成、目標を上方修正した。機能性ビール類はもともと健康意識が高まりやすい40~50代がボリュームゾーンだが、コロナ禍ではそれ以下の層が購入する動きも多くみられたという。 「機能性ビール類の選択には、健康に配慮していると家族などにアピールする役割もあるようです」とアサヒビールマーケティング本部の山本明太郎ブランドマネージャーは明かす。 食と罪悪感を結び付けているものの顕著な例が、「ギルトフリー(ギルティフリー)」だ。2015年頃に欧米などから考えが持ち込まれ、日本では主に、体にやさしい、健康によい、など「食べても罪悪感がない」食事やお菓子を指す言葉として定着している。 例えば植物性代替肉としても注目を集める「大豆ミート」は、肉よりも体に優しいというイメージから、「ギルトフリー」食材として展開されるケースが多い。2019年頃から参入企業が増え、2020年のコロナ禍で一気に拡大した。国内の植物由来の代替肉市場は、2020年が346億円、10年後の30年には2.2倍の780億円に拡大するという予想もある(※2)。