Airbnbはもう古い?「1カ月」単位の宿泊需要増で変わる民泊スタートアップ事情
増える中期滞在需要
欧州のレンタルプラットフォーム大手であるFlatioとNomadXが、今年10月に合併を発表した。1カ月から1年程度の中期レンタル市場に注力することで、滞在プラットフォームのトップランナーであったAirbnbと対抗していく予定だ。 Airbnbがこれまでサービスの中心にすえてきたのは、観光やビジネスを目的とした、数日から数週間の短期利用だった。しかし、デジタルノマドというワークスタイルの誕生や、コロナの影響によるリモートワーカーの増加も受け、中長期滞在のニーズは急成長している。FlatioとNomadXは、ここに目をつけた。 Airbnbやホテルは、短期滞在を前提にした価格設定となっている。そのため、数カ月単位の中長期滞在で使用したい場合は、価格が高くなってしまうというデメリットがあった。また、通常の賃貸契約を交わす場合は、最低滞在期間が1年からに設定されている住宅が多い。このため、数カ月単位の滞在希望者は、滞在先を探すのが非常に難しいという状況があった。 FlatioとNomadXの価格設定は1カ月単位となっており、Airbnbやホテルと比べると割安で借りることができる。また、Flatioのサービスでは、長期滞在にありがちなデポジット(日本でいう敷金)の支払いがない。テナントと大家の間で賃貸契約を結んだり、アプリを通した継続契約と支払いも可能だ。
デジタルノマドやリモートワーカーが求める中期滞在
数カ月単位の中期滞在は、今増えつつあるといわれる「デジタルノマド」の間で需要が高まっている滞在スタイルだ。 場所に縛られずに仕事ができるデジタルノマドは、住みたい場所に旅行も兼ねて自由に滞在しながら仕事ができる。サンフランシスコなど生活費の高いエリアから離れ、生活コストが低い国や地域に滞在することもできる。「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた、休暇を過ごしながら仕事をするワーケーションというスタイルも、リモートワークの増加に伴い一般化した。 そんなデジタルノマドにとって、Airbnbやホテルに数カ月滞在するのはコストの面から選択外だ。一方、長期滞在を前提に不動産を貸し出しているオーナーからすると、数カ月というのは短く、供給がない。Flatioの共同創始者であるRadim Rezekによると、オンラインで利用できる中期滞在サービスは、現状ほとんどないのが現実だという。 リモートワークが一般化しつつある今、自宅オフィスを他の場所にうつしたいという需要も、今後増えることが予想される。スウェーデン、フィンランド 、オランダでは、雇用労働者の30%以上が、現在自宅で勤務をしている。アメリカのデジタルノマドの数は、今年で1千万人になるという予想もある。気分転換に、自宅ではない場所に別荘的に住まいを持ち、仕事場として使用するという需要も、今後増えていくだろう。