福山雅治、約半年におよぶ全国ツアー完走 日本武道館公演のオフィシャルレポート到着
みんなで声を出して終わりたい
アンコール1曲目に選んだのは「無礼者たちへ」。ディズニーの長編アニメーション『ウィッシュ』の劇中歌で、マグニフィコ王というキャラに憑依して歌唱するという、かなり特殊な楽曲だ。これもまた、ひとりのキャラクターの人生であり、さらに、30年以上を誇る福山雅治のシンガーソングライターとしてのキャリアにおける、ある意味での集大成と言える。そして「明日の☆SHOW」で締め括った。 メンバーを送り出し、ステージに一人残った福山がダブルアンコールに応える。 「今から一年くらい前ですかね、日本武道館で『言霊の幸(さき)わう夏』というライブを開催させていただきました。久しぶりの声出し解禁となったのがそのライブでした。そうなると、みんなで声を出して終わりたいなと思ったんです。皆さんの合唱と僕の弾き語りでひとつになりましょう」 そう言ってオーディエンスと共に歌ったのは、「少年」。ここで、あることに気づかされる。それは、観ている我々が福山雅治の描く大きな時間の中にいるという確かな実感だ。福山自らが監督を務め、今年1月に4週間限定でLIVE FILMとして上映され、12月18日(水) には『FUKUYAMA MASAHARU 言霊の幸わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』としてBlu-ray & DVDの発売が決定した武道館でのライブの1曲目が「少年」だった、という事実もさることながら、昨年の武道館からツアーを含めて今日この時の武道館まで、壮大な音絵巻になっているのだ。改めてこの音絵巻の出発地点であるLIVE FILMの完全版が待ち遠しい。 13歳でギターに出会い、18歳で上京し、ひとりのシンガーソングライターへと成長していく彼の実際の人生が、ライブという空間で、しかもそれが時間を跨いで物語として表現されることで、よりドラマティックに、よりリアルなものとして立ち現れていた。言うなれば、「劇場型音楽ライブ」とでも呼ぶべき新しいジャンルがそこにはあった。それはきっと、シンガーソングライターとしての性(さが)に忠実に従った結果であり、またそこに福山雅治しか持ちえない個性(声、ソングライティング、俳優としてのキャリア)がハイブリッドされて初めて可能になるものなのだろう。それもまた、大きな時間が描き出す物語の一環だ。 そして今、彼はアコースティックギター1本を持ってひとりでステージに立っている。まるで初めてギターに出会ったあの時のように。物語は大きな弧を描きながら、また新たな出発点へと到達する。福山雅治が描く壮大な音絵巻に、オーディエンス一人ひとりの人生が重なり、日本武道館という聖地に幾重もの声がこだました。 取材・文:谷岡正浩 撮影:板橋淳一 / 木村琢也 <リリース情報> 『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏@NIPPON BUDOKAN 2023』Blu-ray / DVD 2024年12月18日(水) リリース